• 教材や実験の開発情報

※学生向けの遠隔授業についての指示は、最後にあります!

備長炭とアルミホイルを用いて電池をつくります。炭内部の微細構造に吸着されている酸素と電解液である塩化ナトリウムの存在も重要です。不要となったアルミニウムが電子の供給源になることの意味についても考える機会とします。

「動 画」備長炭をお湯にいれたら泡がたくさん発生してきた。たくさんの空気を吸収していることがわかる。


実験プリント版

「実験テーマ」

炭とアルミホイルで電池をつくる

「目 的」

身近な素材を用いて電池を作成し、電気が取り出せる仕組みについて考える。

「学習項目」

酸化還元 電池 炭化 電気量

「実験概要」

  • 炭は優れた電極:炭の主成分は、ほぼ単体と考えてよく、金属でないのに導電性を示す物質でもある。この電池の場合、炭は単にアルミホイル側から供給(①式)された電子を酸素に渡す役割をしているだけで、反応物はあくまでも空気中の酸素(②式)。炭が電極になる理由は、炭が熱によって植物体から水分子が除かれたもので、細胞の形がある程度保持されたまま細かい空間(多孔質体)を作るためで、内部に酸素が吸着されやすくなっているからである。特に、備長炭は酸素の吸着度が高く、電極での酸素濃度を高く保つので、より酸化還元反応を起こしやすいものと考えられる。この電池における各電極における反応は次の通り。

負極:Al→Al3+ + 3e …①電子放出

正極:O2 + 2H2O + 4e– → 4OH…②電子受取

両方の電極での反応は…①+②として

4Al + 3O+ 6H2O → 4Al(OH)3

反応後の炭電極側のペーパー部分で、フェノールフタレインが赤紫色を呈するのは、生成する水酸化物イオン OH によるものと考えられる。

  • アルミニウムが電子を供給:アルミニウム1molは27gに相当し、このすべてがイオン化したとすると3倍量の電子が放出される。また、1molの電子(e)は、96500〔C〕(クーロン)という電気量に相当するので、回路に流れた電気量Qを、電流の大きさI〔A〕(アンペア)と時間t〔s〕(秒)の積で表すと…

電気量:Q=It 〔C〕(クーロン)

また、流れた電気がする仕事W〔J〕(ジュール)は、電力P〔W〕(ワット)と時間t〔s〕の積となる。

仕事量:W=Pt=VI〔J〕

アルミ缶1個(約20g)を作るのに40〔W〕の白熱電球を約10時間点灯できるという計算になり、いかに大量の電気が使われているのかが実感できる。

  • 身の回りはアルミニウムが豊富に存在:飲料缶や車のタイヤホイル、一円硬貨、サッシ、食器、航空機の本体に至るまで、あらゆる物にアルミニウムが使われている。アルミニウムは鉄と並んで、身近な金属の代表格と言って良いだろう。ところが、この身近なアルミニウム、わが国はその原料となるボーキサイトのほとんどを海外に依存しているのが現状である。輸入された原料は、電気分解によって取り出され、様々な加工を経て製品の体を成すまでに、大変なエネルギーを要する材料でもある。

「準 備」

備長炭(約20㎝) 金網 ガスコンロ 針金2本(15㎝程度:炭の太さに合わせて調整) アルミホイル 針金B リード線 キッチンペーパー 約3%塩化ナトリウム水溶液 駒込ピペット ソーラーモータ 電子オルゴール フェノールフタレイン指示薬

「操 作」

  • 長さ20㎝程度の備長炭を金網上で、軽く火であぶった後、放冷する。
  • 備長炭の上端に、針金A(20㎝程度:炭の太さに合わせて)をひとまわりさせて接点をつくる。
  • 針金Aに触れないよう、キッチンペーパーで炭をくるむ。さらにひとまわり小さめのアルミホイルを炭の下部の方からくるみ、下端に針金Bをひとまわりさせる。
  • 針金AとBを接点にし、それぞれにリード線を接続する。このとき、アルミホイルと炭は接触させてはならず、両者がペーパーにより仕切られている状態にする。
  • アルミホイルを少し開き、約2%塩化ナトリウム水溶液を駒込ピペットを用いて、キッチンペーパーを十分に湿らせる。
  • リード線にソーラーモータや電子オルゴール等の電子部品を回路に組み入れて、備長炭を強く握る。
  • 終了後、電池解体時に、アルミホイルの様子を観察し、ペーパー部分にフェノールフタレイン指示薬を滴下する。

「注 意」

  • 電子部品に食塩水が付着しないように注意する。付着したら、濡布で拭き取ること。
  • 解体時、炭は軽く水洗して、塩分を取り除いておく。

「観察・記録」

1.構造解説:全体の構造がわかるように

2.動作~原理解説: 操作によって科学的に どのようなことが起こるのか?

3.観察・結果(気づいたこと・工夫したこと)

「考察・教材研究」

1.アルミニウム缶(13.5 g のアルミニウムが 使用されているとする)1 個をリサイクルし て得られる電気エネルギーについて答えな さい。

(1)1mol の電子が持つ電気量をクーロン 〔C〕で表しなさい。

(2)アルミニウム缶 1 個から得られる電気量 Q〔C〕を計算しなさい。ただし、アルミニウ ムはすべて電気エネルギーに変換できたと 仮定する。

(3)この缶から得られた電気エネルギーで 40 W の電球を何時間点灯させることができ るか計算しなさい。ただし、一定電圧下で安 定して点灯が継続したと仮定し、総電気量 Q 〔C〕は、電力 P (= EI〔W〕ワット)と時間 t〔s〕の積で表す Q = Pt

2.備長炭の果たした役割は何か、説明しなさ い。

3.教育課程上の位置づけ

4.指導上の留意点


◇遠隔授業での設問

  1. アルミニウム缶(13.5 g のアルミニウムが 使用されているとする)1 個が持つ電気エネルギー〔C〕を算出しなさい。
  2. この実験において、炭が果たした役割は何か?100文字以内で説明しなさい。

◇遠隔授業としての指示:設問の回答をこの下のコメント欄に直接記入しなさい。出席確認機能も兼ねているので、可能な限り各授業時間内に回答すること。また、最初に「5/5・名前(名字のみで良い)」をわかるように記載すること。(内容は自動的に指導者に送られるが公開されない設定になっている)


コメント一覧

返信2020年7月9日 8:35 AM

廣田23/

5.5 廣田 1. 96500C 2. 96500×3=289500C 3.289500÷40=7237.5s 7237.5÷60=120.625 約2時間 アルミホイルから電子を酸素に渡すという、電極の役割を果たしている。

返信2020年6月9日 6:20 PM

佐友23/

6/9 佐 1、13.5÷27=0.5 0.5×3×96500=144750 144750 C 2、空気中の酸素を構造の中に吸着することで、アルミニウムが放出し導線からやってきた電子を酸素に受け渡しやすくしている。

返信2020年6月3日 4:29 PM

匿名23/

6/3 荒 1. 48250[C] 2. アルミホイル側から供給された電子を酸素に渡す役割。炭が電極になるのは、植物体から水分子が除かれて、内部に酸素が吸着しやすくなっている。

返信2020年6月3日 12:46 PM

濵口駿作24/

6/3 濵口駿作 1.アルミニウム13.5gは13.5/27 = 0.5㏖ また1㏖ = 96500 Cなので、96500*0.5=48250 C 2. 木炭に染み込んでいる酸素や水中の水素イオンなどの分子にアルミニウムから供給された電子を与える正極の役割

返信2020年6月2日 9:29 PM

匿名23/

1. 村 13.5/27=0.5〔mol〕 1molの電子は96500〔C〕のため 96500×0.5=48250〔C〕 2.アルミホイルから供給された電子を酸素に渡す役割。植物から水分子がなくなり空間ができることで酸素が内部に付着しやすくなっている。

返信2020年5月19日 6:24 PM

芦野美優24/

5/5 芦野 設問1. 48250〔C〕 設問2. 炭は熱によって植物体から水分子を抜かれたもので、細かい空間をもっているため、その内部に酸素を吸着し、アルミホイル側から供給された電子を酸素に渡す、電極の役割を果たしていた。

返信2020年5月14日 11:38 AM

さいえんすヨージ25/

前回の更新時(5/9)に、出席・レポート提出機能として追加の指示をしました。今後、期間延長など、状況が流動的であるため、まめに情報をチェックしてください。なお、出席確認機能も兼ねているので、各授業時間内に回答してください。

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