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油脂を加水分解することで、脂肪酸ナトリウム塩(セッケン)を作ることができます。油脂として牛脂やココナツオイル、グリセリンや砂糖を透明化剤として用いました。


実験プリント版

「実験タイトル」油脂の加水分解による脂肪酸ナトリウム塩(セッケン)の生成

「サブタイトル」

「準 備」「操 作」web非公開

「画 像」グリセリンとグラニュー糖で透明度を上げてみました。色素は天然のシコニンを添加。油脂とエタノール-水層が分離しているように見えるが、エタノールを加えることで反応がスムーズに行われる。


「解 説」

1.油脂はエステル化合物:油脂は、グリセリン(三価のアルコール)と脂肪酸(カルボン酸)のエステルです。自然界には数多くの脂肪酸が存在するので、グリセリンの持つ三か所のヒドロキシ基部とエステル結合をする関係、その組み合わせは膨大なものとなります。分子量が大きいため常温で固体のものが多く芳香や色も様々であるため、工業的にも大変重要な物質となっています。

CH2-OH   HO-CO-R      CH2-O-CO-R1

|                   |

CH2-OH +   HO-CO-R2 → CH2-O-CO-R2

|                     |

CH2-OH         HO-CO-R3        CH2-O-CO-R3

グリセリン    脂肪酸            油脂(エステル)

2.油脂をアルカリで加水分解することで得られる:エステルは酸やアルカリによって、アルコールとカルボン酸に加水分解することができます。油脂の場合も同様ですが、アルカリを用いると脂肪酸はアルカリ塩の化合物となり、この物質がセッケンと呼ばれるものです。また、この加水分解の作業を特にけん(鹸)化と呼び、1 gの油脂をけん化するのに必要なアルカリ(水酸化カリウム)の質量mgをけん化価といいます。なお、分子量が大きい油脂ほど、けん化価が小さくなります。

CH2-O-CO-R1                 CH2-OH         NaO-CO-R1

|                                         |

CH2-O-CO-R2 + 3NaOH  →   CH2-OH     +   NaO-CO-R2

|             水酸化ナトリウム     |

CH2-O-CO-R3                       CH2-OH         NaO-CO-R3

油脂(エステル)           グリセリン    石けん

3.セッケンの性質

(1)構造上の特徴:セッケンは、脂肪酸塩のことであり、一般式はR1-CO-ONa。水に溶けにくい疎水基(炭化水素鎖)と水に溶けやすい親水基(カルボキシル基)を合わせ持つため、油にも水にも溶けやすいのです。

(2)界面活性剤:水溶液中で、疎水基を内側に、親水基を外側にした球体(ミセルコロイド)をつくり、その中心に油を取り込む(乳化)ことができます。繊維に付着した油汚れが落ちやすくなるのは、この乳化作用のためです。ただし、Ca2+やMg2+を含む硬水中では、成分の凝集沈降が起こりやすくなり、セッケンとしての役割を果たしにくくなります。

(3)セッケンの由来:その昔、古代ローマ時代のサポー(Sapo)の丘の神殿で、いけにえの羊を焼いて神に供えるという神事が行われていました。焼けて滴り落ちる羊の油脂が、木の灰やある種の土壌成分(アルカリ:塩基性酸化物)と反応し、セッケンが偶然にできたといいます。それが浸み込んだ土は、汚れを落とす不思議な土として大切にされ、サポー(Sapo)が、石けん(soap:ソープ)の語源となったと言われています。


〇参考:山田暢司,化学実験室,工学社,2016,115

◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。




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