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カチッと一発、放電によって簡単に火を起こす便利なライターがありますね。放電を起こす圧電素子には、ある種の結晶の性質が利用されています。この素子を用いて、紙の疑似平面で人工のミニ雷を起こしてみることにしました。

「動 画」圧電素子で放電現象を観察してみる

厚紙にアルミホイルを貼り付け、大気圏に見立てた疑似空間を工作し、そこに圧電素子をつなげて放電させるというものです。後半では、従来の蛍光灯で用いられてきた光電管を使ってみました。圧電素子ですが、大きな電流は流れませんが、ショックがあるので取り扱いに注意が必要です。

「解 説」

1.  イオン結晶への衝撃で生じる電気:ロッシェル塩を始めとするいくつかの物質は、強誘電性を示すことが知られています。これは、結晶の一方から強い衝撃を加えると、片側の面にプラス、反対側にはマイナスというように正負の電荷が発生するという現象です。原子が整然と並ぶイオン結晶でよく見られる現象なので、衝撃による電荷の逆転が連続して伝わるようなイメージで、広い意味での摩擦ルミネッセンスと考えることができます。衝撃を与えた側面と、反対の面の両極からリード線を引くと、電荷の偏りを解消しようとして、その間で放電が起こるのです。身近なところでは、ガスライターを簡単に着火させる仕組みに利用されています。なお、ロッシェル塩は、その昔、強誘電性が発見される以前は、ぶどう酒工場の樽の底にできる結晶で、下剤として使われていたという代物。今や、ライターの火花の他に、圧電ブザーや圧電モーター、魚群探知機などの精密機器、セラミックコンデンサーやメモリーにも応用され、今後さまざまな分野で活躍が期待される素材でもあります。

2.  人工落雷で雷の性質を知る?:アルミホイルでつくる疑似空間は、形や間隔を工夫すると楽しく観察ができます。例えば、雷についての一般的知識で、低い建物と高い建物では、高い方で放電が起こりやすいというのがあります。しかし、四角い建物と先のとがった樹木や丸いドーム型では、意外にも丸いドーム方の方に落雷しやすいのです。このことから、先のとがった方がエネルギー的に放電しやすいと思いきや、ドーム型の面積の効果が上回るのではないかとも考えられるのです。さらに、鉛筆で線をなぞると、電気が炭素粉末に導かれます、条件を等しくしたつもりでも、稲妻が枝分かれしたり、放電するコースが毎回ばらばらになるなど不思議な振る舞いも観察できます。もっとも、そんな正確に装置を設計しているわけではなく、あくまで実験工作を楽しむレベルのものですのでその点はご了承ください。なお、ロッセル塩への衝撃によって生じる高電圧とその結果として観察できるプラズマは分けて考える方がよさそうです。私たちが通常放電現象としてとらえているあのイナズマは、付近の窒素分子が高エネルギー状態に励起されたものが安定な基底状態に戻る際に余剰となったエネルギーが光エネルギーとなって観察されるものです。


◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものがありますので参考になさってください。


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