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卵殻がきれいに溶け去った卵膜だけのぷよぷよ卵。この卵膜を真水に浸けたり砂糖水につけたりすると卵の大きさや重さが変わるという浸透現象を観察します。

「動 画」準備中

□卵膜だけのつるつる卵を用います。

「解 説」

卵が膨らんだり縮んだり:殻を溶かし去った後には、半透明で厚さ約0.07ミリの薄い卵殻膜が残ります。この膜は、主に弾力のあるタンパク質からなる緻密な繊維状構造を持っています。卵膜だけになった卵はスキンエッグとも呼ばれ、その昔マジシャンが、内容物を上手にかき出して洗浄したものを、卵を突然手に出したり隠したりという手品に使ったという記録もあるそうです。このスキンエッグを真水に浸けておくと、卵がパンパンになって膨らんできますが、濃い砂糖水に浸け直すと、反対に始めよりも一回り小さくなってしまいます。これらは、卵殻膜と卵内部に存在する物質の粒子の大きさが関係して起こる現象です。『ナメクジに塩』『青菜に塩』ということわざにあるように、動植物の細胞膜を境にして細胞内部の水が移動することで、細胞内の膨圧が変化するのです。

浸透圧:希薄溶液中に存在する粒子は、気体粒子の熱運動と同様な振る舞いをするので、溶液の状態も気体の状態方程式に似たような方法で表現が可能です。一般に、希薄溶液中での粒子の熱運動による浸透圧(Π)は、c:モル濃度(電解質の場合はその電離している粒子数に比例)、R:気体定数、T:温度により…

Π=cRT

これは、ファントフォッフの式として知られているものです。

細胞内には、糖類、タンパク質などの比較的大きな粒子が、熱運動をしながら存在していて、それらは比較的大きな粒子であるため細胞膜を透過できず、膜に衝突して跳ね返されてしまいます。その衝突の程度によって、細胞外の溶液の状態とに差があれば、その差を解消しようとする作用が働きます。小さなイオンや水分子などは細胞膜を通過(そのように選択的な透過現象を示す膜を半透膜と呼んでいる)する浸透現象が起こります。この浸透現象は、膜をへだてた溶液の浸透圧の差からもたされたと考えることもできます。

浸透圧の活用:保存を利かせるために食品を塩漬けや砂糖漬けにすることがあります。これは食品内部の浸透圧が高いため、微生物自身の水分が奪われてしまい、その繁殖が抑えられる効果を利用したものです。浸透圧に関わる実験では、半透膜としてセロハンがよく用いられています。コロイドの分野と関連して、半透膜、浸透圧、透析の概念とセットで学習することが多いようです。なお、多くの教科書で、半透膜で純水と溶液を仕切り、溶液側に大きい圧力をかけ、溶液から純水の方に水を浸透させて淡水化を図る方法や、無菌水や超純水をつくる技術などが紹介されています。


◇実験タイトル:ぷよぷよ卵で浸透圧

◇サブタイトル:卵を浸けてご卵(らん)?

◇キーワード:半透膜 浸透圧 透析

◇参考:山田暢司「半透膜を通して移動する水」理科教育ニュース 2010.11.18


◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。




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