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銅表面に繊細な銀色の針状結晶がまるで樹木のように伸びてきます。針状の銀と溶出してきた銅イオンの青が、まるで光り輝くサンゴが青い海に広がっていくようなイメージです。

「動 画」銀樹ボトル

□銀が樹木のように伸びてくるので、銀樹と呼ばれています。そのままでは壊れやすいので、寒天を用いて固めて観察しやすくしています。

「動 画」銀樹ボトル作成

□寒天はやや薄めに調整するほうがうまく仕上がるようです。

「解 説」

イオン化傾向:金属の陽イオンへのなりやすさをイオン化傾向といい、金属元素をその順に並べたものをイオン化列と呼んでいます。例えば、カリウムは反応性が高く、電子を放出してカリウムイオンとなって安定しやすいのですが、金はほとんどイオン化することはありません。金属の反応性の違いの説明に用いられる概念でもあります。硝酸銀 AgNO3は、水溶液中 でAgNO3 → Ag+ + NO3 のように電離しており、銅線を入れるとイオン化傾向が異なるため次のように酸化還元反応が起こります。

還元反応:Ag+ + e → Ag   酸化反応:Cu → Cu2+ + 2e

全体としては、2Ag+ + Cu → 2Ag + Cu2+ となり、銅からは還元されてきた単体銀が析出してくるのです。これは、イオン化傾向 Cu>Ag の比較から、イオン化しやすい銅が電子を放出し、その電子を銀が受け取るというように単純に説明されています。この電子授受反応を別々のところで起こるようにして開発されたものが化学電池であり、現在でもイオン化傾向を利用して電流を誘導し、エネルギーを取り出すという設計の電池が大半を占めています。ただし、実際の銀イオンと銅の反応では、一価の銅イオンが形成されて複数の化合物を生成するなど複雑な要素を含んでいます。

金属が樹木のように析出:銀樹をつくる実験では、硝酸銀の水溶液に銅片を糸で吊す方法が多く紹介されていますが、壊れやすくてなかなか見事な銀樹にはなりません。しかし、寒天やろ紙を使うと銀樹が安定して比較的大きく美しい金属樹ができます。また、銀樹の析出後、溶液が青くなるので、銅イオンの生成によるものであることも確認しやすくなります。寒天に含まれる有機物の一部が硝酸銀と反応して褐色に濁ってくることもありますが、試薬の濃度を下げたり、低温で反応させることである程度抑えることはできます。ちなみに、純水を使用しても寒天中にもともと含まれている塩化物イオンと反応して、塩化銀の濁りができてしまうようです。

動画では、銅線(渦巻き)を上から垂らす方法を主に紹介してますが、寒天と硝酸銀の濃度調整がけっこう微妙です。銅板を底に置くだけの方が、仕上がりはきれいですが、銀イオンの拡散に数日要します。なお、一時的に褐色部分が現れても、次第に水色になって透明度が増していくことが多いようです。

◇実験タイトル:美しい銀樹をつくる

◇キーワード:金属 イオン化傾向 酸化還元反応

◇監修映像『Yahoo!映像トピックス』 → 高画質動画:キラキラ銀樹


◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。




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