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歴史的に不思議なガラスとして知られています。ガラスを溶かして急冷するとものすごい硬いガラスとなりますが、端を折るだけで破裂し粉々になってしまうというものです。

「動 画」解説付き

「動 画」作り方:ガラスをあぶって溶かす

「動 画」ものすごく硬い、強化ガラスとなっている。鉄棒を落としても割れない

「動 画」ところが端を折ると簡単に割れる


「実験タイトル」不思議なガラス『オランダの涙』を作る

「サブタイトル」オランダの涙、知らなんだ!

「キーワード」強化ガラス 偏光

「解 説」

1.  強固かつ脆(もろ)いガラスの生成:強熱によりドロドロに融解したガラスを水中に落とすと、表面が急激に冷やされて涙型のガラス片となります。内部も次第に冷えて収縮しながら固まってきますが、外側がすでに固まっているので、冷えて収縮しようとしてもそれに耐えようとする外側の力の引っ張り合いが起こるのです。結果として、表面は強化され、内部に向かう強い圧縮の力がかかった状態の大きな歪を残したまま全体が固まることになります。普通のガラスは、表面の引っ張りの力に弱くてすぐにヒビが入しますが、この涙型ガラスの表面には強い圧縮力が働いているので、少しくらい引っ張ってもビクともしないのです。金槌で叩いても簡単には割れません。ところが、涙型の細くなっている端の尻尾部分をペンチで割ると、ガラス全体が爆発して粉々になるという性質があります。尻尾の切断で内部にまで傷が入ることで、強い引っ張り合いの均衡が崩れ、ガラス本体にまでその亀裂の影響が及ぶのでしょう。この強固かつ脆い性質は、ビルや車で使用されている「強化ガラス」に共通する性質です。急冷により強固なガラスですが、破壊されるときには、鋭利な部分を残さず粉々になるため安全でもあります。

2.  オランダの涙:オランダの涙の名は、17世紀中頃、実験で使われたガラスがオランダ製であったことに由来します。この涙型のガラス内部をよく観察すると、真空の泡が残っていることがあります。これは、ガラス表面が急冷によりロックされた状態で、内部への強引な収縮が起こったことによるものです。また、二枚に重ねた偏光板を使うと、ガラスがきれいな虹色の光を放ちます。ガラスは、相当の歪みが残ったまま固まるので、ガラスを通過する光が、場所によるねじ曲がり具合の違いにより干渉縞を生じるのです。なお、より安全で扱いやすいオランダの涙の作り方としては、溶融させたガラスを水ではなく、油に滴下して冷やす方法があります。


◇参考:小倉毅『オランダの涙』全国理科教育大会(2007)


◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。


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