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ホットケーキミックス粉を水や牛乳を加えてミックスし、電気を通じて熱を発生させて、その熱によって生地を膨らませます。いわゆる、電気パンの原型です。

「動 画」タイムラプス撮影

□電極にはチタン板(ケニス製:68×80×10mm)を使用していますが、大きな電流が流れるため、感電防止配慮が必要です。倒れにくいようにガムテープでコードを固定してます。操作は一人が担当し、何が起こっても反射的に手を出さないよう注意を徹底することです。なお、安全のため回路中に200W電球をつなぐことが推奨されています。

「動 画」


「解 説」

1.イオンが電気を導く:イオンからなる結晶は、正負のイオンが電荷を中和するように規則正しく並んで構成となっています。結合はかなり強く、イオンの動きが抑制されているので、電気を導きません。しかし、水のような極性を持つ溶媒に溶解した場合は、イオンが自由に動き回るようになるので電気を導くようになります。材料のホットケーキミックスには、NH4+、Cl、Al3+などの電解質が含まれています。通電によって電気エネルギーにより熱が生じ、含まれている炭酸水素ナトリウムが熱分解を起こし、二酸化炭素が発生します。発泡した二酸化炭素は泡の形を保ちながら、生地を膨らませていきます。

 2NaHCO3 → Na2CO3 + H2O + CO2

2.電気でパンを焼く:電気を通じると、ミックス粉内で電気エネルギーが消費され熱エネルギーが発生します。その熱による炭酸水素ナトリウムの熱分解とともに、ミックス粉の主成分であるデンプンのα化も進行します。二酸化炭素の発泡と生地のα化が同時進行し、生地内に空間をもつふかふかした構造(エアイン)ができあがるのです。また、熱の発生によって生地の温度が上昇し、水分が蒸発しておくと、自由に振動していたイオンの動きが鈍くなってきます。パン生地が焼きあがったころには、ほとんど電気が流れなくなるため、わざわざスイッチを切らなくてもよいという仕組みとなっています。ほっといてもホットケーキが焼きあがるわけです。

なお、ホットケーキを電力で焼き上げるためには、大きなエネルギーが必要となります。発生する水蒸気だけに注目しても、水を沸騰直前まで加熱し、さらに蒸発させるための熱が必要です。水が蒸発する際には次の熱化学方程式の通り、100 ℃の水18 gを蒸発させるだけでも、41 kJものエネルギーが必要であることがわかります。

 H2O(液) = H2O(気) – 41kJ

電気器具を用いる実験としてかつてはよく実施されていたものですが、感電事故を起こさないよう細心の注意が必要な実験です。


◇材料


◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。


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