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インジゴ(indigo)は、藍植物に含まれる天然色素で、世界的に古くから用いられてきた、酸化還元反応を利用した染色法です。

「動 画」シンプルな生葉染め

ここでは、最も簡素で取り組みやすい方法として、タデアイの葉に含まれる色素を直接繊維に固着させる実験を紹介しています。タデアイの生葉には、インジカン(インジゴの前駆体)という無色の物質で存在しますが、葉が枯れたり物理的な刺激が加わると、葉に含まれている酵素が働きます。この酵素(β-グルコシダーゼ)は、インジカンを構成しているグルコースを外し、インドキシル(indoxyl)を生成する役割を果たします。このインドキシルは、空気中の酸素と触れ合うことで速やかに酸化され、青色(藍色)のインジゴ(indigo)となるのです。

生葉染めの操作は、きわめてシンプルで、時間的な制約がある場合に推奨される「藍染め」です。木綿の他、和紙も染めることができます。ただし、タデアイを栽培し収穫できる期間(5~7月頃)にしか実施できないのが難点です。

「動 画」化学染め_化学建て

インジゴは水に不溶なため、水に溶かして効率的に染色することは困難なため、いったんインジゴを水溶性の物質に変え、十分な濃度に高めてから繊維に固着させる必要があります。伝統的には、タデアイの葉を、微生物の還元作用による藍建という染色法が用いらてきましたが、近現代においては、化学的に還元し効率的に生産する方法が確立されています。特に、後者は、ハイドロサルファイト(ハイドロ)のような還元剤による化学建てとして知られています。

水に不溶の深い青色色素であるインジゴは、還元されて水に溶けやすいロイコインジゴとなるわけです。

インジゴ(酸化体)   ⇄  ロイコインジゴ(還元体)

(深青色:水に不溶)     (黄色:水溶)

繊維染色の立場からは、水溶液として色素の濃度を高め、繊維に均一に染色することが必要です。還元体であるロイコインジゴは、水酸化ナトリウムのような強塩基によってアルカリ塩となって水溶しています。そこで、繊維に十分にしみ込んだ状態で空気にさらすと、たちまち酸素と反応して、酸化体のインジゴに戻るのです。インジゴが水に不溶の色素として繊維に絡みつくので、この酸化還元反応は実に都合がよいのです。

これらの藍染めの手法は、現代の化学工業において大変な付加価値を生んでいて、ジーンズをはじめとする数多くの製品に活用され親しまれています。


◇実践記録映像:理科教育法


◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものがありますので参考になさってください。


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