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紙おむつ等に用いられている不思議物質「高吸水性ポリマー」は、少量でもたくさんの水を吸収することで知られています。ふりしぼっても水は出てきませんが、内部にたくわえられている水を利用し、水耕栽培のまねごともできるようです。

「動 画」高吸水性ポリマーの紹介


紙おむつを破き、中身の吸水性ポリマーの小片を取り出してみました。ポリマーが飛び散らないよう、新聞紙等を敷いておくといいでしょう。ビーカーに移して水を加えるとたちまち膨潤し、ビーカーを倒しても水は流れ出てきません。約1  g でゆうに100  mLは吸水できるようです。しかし、そこにある種の金属イオンを含む電解質を加えると、蓄えられていた水が開放されてきます。なお、動画では、ニンジン上端の切れ端を用いて水耕栽培のようにしています。

「解 説」

高分子電解質による膨潤:吸水性ポリマー(SAP:Super Absorbent  Polymer))は高分子化合物で、分子内にカルボキシル基がイオンになったもの -COO とナトリウムイオン Na+ を含んでいます。両イオンともに水との親和性が高く、水溶液中でナトリウムイオンが離れると、ポリマーにつながっている-COOが互いに反発し合うようになります。分子間にスペースが生まれ、そこに水が入り込んで全体が膨潤するのです。鎖の部分は架橋されているので、分子は溶解せず、全体として高分子ゲル状態が生まれます。市販されている紙おむつには、ポリアクリル酸ナトリウムが使われていますが、元の体積の数百倍~にまで水を吸い込むことができるとされています。なお、膨潤したポリマーに強酸や金属イオンを加えると水がしみ出てきてしまいます。これは、酸が加わることでカルボキシル基-COOHに戻り、ナトリウムイオンを含む水が出てきたことによります。この場合、酸の水素イオンとナトリウムイオンが交代する、イオン交換が起こることになります。この種のポリマーの性質は、イオン交換樹脂として、水の精製(不要なイオン種を除く)に利用されています。高分子吸水ポリマーは、衛生用品の他、吸湿性建材、土壌保水剤、保冷剤など、様々なものに用いられています。特に、砂漠の緑化計画のような地球的規模のプロジェクトでは、大きな効果が期待されるようになっています。

なお、実験で捨てられる運命にあるちっぽけな根菜の切れ端を使って、芽を出させるというトライをしています。しかし、電解質濃度の関係かあまり大きな成長は期待できないので、適当な時期にポットに移して育てることをお勧めいたします。


◇実験タイトル:吸水ポリマーで野菜を育てる

◇サブタイトル:水耕栽培芽が出ためでたい


◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。




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