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化学変化に伴い発生するエネルギーが光として放出される現象です。反応の前後でほとんど熱の出入りを伴わないので、冷光と呼ばれることもあります。特に、自然界には体内で化学変化を起こして発光する生物もたくさん存在していて、昆虫のホタルがよく知られています。

「動 画」PETボトルを用いて_学生によるレクチャー編

触媒となる鉄剤をティッシュペーパーに包んでおき、発光時間を保つ工夫をしています。

「動 画」作り置きしておいた試薬を用いて

試薬を調製して一昼夜置いたものでトライ。直前に試薬調製するのは大変なので事前用意できると作業は楽になります。過酸化水素やアルカリによるルミノールへの影響は小さく、触媒の存在の大きさがかわります。

「動 画」カブを用いて

野菜に含まれる酵素でも、発光を観察することができます。根菜を輪切りにして、ルミノールと過酸化水素を注ぐと、特に外側の部分が強く発光します。野菜に含まれる酵素(ペルオキシダーゼ)が過酸化物を分解していることになりますが、これは毒性の強い過酸化物の侵入を阻止し、生体を守るという防衛反応のようにも思えます。

「動 画」乾燥ウミホタルをつぶすと発光する

ウミホタルは、体長2-3mmの甲殻類で、深さ数mの海の砂地に生息しています。乾燥させても、反応に関与する物質は変質しにくいので発光の実験に向いています。


1.化学発光:光は、物が燃焼したり、電気による照明などで観察されるものとばかり思いがちですが、化学変化に伴って発生するエネルギーが光に変換されることがあります。化学物質の変化による発光なので「化学発光」なのですが、反応の前後でほとんど熱の出入りを伴わないため、冷光と呼ばれることもあります。体内で化学変化を起こして発光する生物も存在し、昆虫のホタルがよく知られるところです。ホタルの種類によって、発光のリズムが違うとか、生物が器用に化学変化をコントロールしているというのは興味深く、自然の神秘を感じさせる現象です。

2.生物の発光メカニズム:化学発光は、化学反応によって物質が励起状態になり、それが安定した状態に移行する時に余剰となったエネルギーが光に変換される現象です。ホタルの場合、体内に存在するルシフェリンという物質が、酵素(ルシフェラーゼ)やATP等と反応し、エネルギーの高い励起状態のオキシルシフェリンが生成します。このオキシルシフェリンが分解して一気に基底状態に戻るときに余剰のエネルギーが光となって放出されるとされています。この生物の体内で関与した物質が効率的にリサイクルされる点も興味深いです。

3.ルミノール反応:実験で使用したルミノールという物質は、生物体内のルシフェリンと似たような構造を持ち、過酸化水素により酸化されて、やはり励起状態の物質を生成します。この反応は、鉄(Ⅲ)イオンによって反応が促進されることがわかっています。逆に言えば、鉄分を含むものと反応して発光するので、鉄イオンの検出に利用することもできるのです。かつて、警察の科学捜査における、血痕の鑑識に用いられたこともありますが、事件現場に残された血痕が人間のものであるかの判定能力は低かったと考えられます。


◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。




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