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濃度や温度の違う溶液は、なかなか混ざり­にくいという現象を扱った簡単な演示実験です。

「動 画」濃い溶液に薄い着色液を注ぐ

□少し振り混ぜてもなかなか混ざらない。境界線があるように見える。

「動 画」濃度の異なる2種の水溶液を用いたカラーマジック:学生による演示

□始めに砂糖を溶かし込んで密度の大きな水溶液(緑色)を下に配置し、水を赤色に着色したものを上に重ねます。仕切り板を除いてもすぐには2種類の水溶液は混じりません。濃度のことなる溶液がなかなか混じらない例です。もちろん、時間経過とともに粒子の熱運動の影響が大きくなり、次第に均一な溶液となります。なお、比較として、濃度を高くしたものを上に配置(色はわざと同じにして緑のまま)して仕切り板を除くと一気に両方の水溶液は混じる様子も演示しています。こちらは単純に密度の大きい水溶液が下方に移動することを示すものです。

「解 説」

1.混ざり合うようで混ざらない:海流の暖流や寒流がぶつかるところを上方から観察すると、それぞれの海水は互いに混ざりにくく、境目(潮目)がはっきり見えるといいます。また、アイスコーヒーを飲まずに放っておくと、氷が溶けてできた水は、上部にたまっているだけでなかなか混ざりません。これらは、濃度差や温度差のある溶液が混ざり­にくいということを表しています。もちろん、溶液の温度が高まると熱運動の影響が大きくなり、次第に混ざり合っていきます。当たり前の現象のようですが、濃度と温度と溶けやすさの関係は、複雑な要素も多く、単純には読み解くことができません。

さて、食紅溶液を水に滴下した場合ですが、次第に色素が広がっていき、最終的には均一な色水となります。これは拡散という現象で、水に溶けた物質(粒子)が自由に動き回り、溶液の隅々にまで行き渡ろうとするものです。温度に応じた粒子の動き(熱運動)ですが、温度が高まると激しい熱運動をする粒子の割合が増加し拡散の速度も高まります。一般的に、温める方が、物が溶けやすくなるということはそういった理由によるものです。

2.溶質と溶媒の複雑な相互作用:食塩の溶けている水に、別の水に調整した色素を混ぜようとすると、拡散の速度がかなり低下します。これは、塩化ナトリウムなどのイオン性の結晶が水に溶けて安定した水和イオンを形成しているためです。例えば、正電荷を持つナトリウムイオンの場合であれば、極性分子である水分子の負に分極した部分(酸素原子側)を引きつけるため、一定量の水分子が束縛されることになります。結果として、色素の拡散に利用できる水量が相対的に減少し、その速度が低下すると考えられています。また、アイスコーヒーの上の氷が解けてできた水の例ですが、拡散の意味からは、コーヒー成分とすぐにでも混じり合いそうなものですが、糖分が溶け込んでいる溶液や色素はもちろん、氷が解けて生成した水さえも、熱運動の効果がいきわたり、均一の溶液になるには一定の時間を要することがかわります。

▽「サブタイトル」濃、度うなってるの?

▽「キーワード」 溶液と濃度 電解質 イオン 熱運動 拡散


このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。



コメント一覧

返信2023年10月22日 11:27 AM

白い結晶が降ってくる_塩化ナトリウム編 | らくらく理科教室26/

[…] ◇参考:なかなか混ざりにくい液体 […]

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