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銅とスズを加熱、溶融させて合金(青銅)をつくります。型に入れて冷やしたのち、磨き上げると美しい鏡面が見えてきます。難度は高いですが、手応えのあるダイナミックかつロマンを感じる実験です。

「動 画」合金(青銅)をつくる

「動 画」研磨剤で磨き上げる

□実験では、スズ30g・銅片70 gを用いています。さらに、活性炭薬さじ(大)1杯程度を加え、加熱溶融の際に金属が空気中の酸素との反応を防ぎ、不純物として含まれる金属酸化物を還元しやすくしています。

「解 説」

銅とスズの合金(青銅):銅(融点1085℃)、スズ(232℃)を混合することで凝固点降下が起こり、スズの割合が30%であれば融点は700℃程度にまで低下します。合金にすることで、低温での鋳型加工や彫金がしやすくなるのです。スズの割合をさらに高くするともっと融点が下がり、磨くと白銅色~銀色になって映り方は自然な感じになるのですが、もろく割れやすくなってしまいます。逆に、銅の含有率を増やすと、黄金~茶色を帯びて、鏡としては色映りがちょっと悪くなります。

人類初の合金:青銅は、人類が天然に産出する金属に手を加えて造り出した最初の合金です。約6000年ほど前に興った加工文化は、青銅器文明とも呼ばれ、鉄製造の技術が興るまでの長い年月、一般的な金属として様々な形で利用されてきました。我が国でも、弥生時代にはすでに多くの青銅が生産されるようになり、各地の遺跡から器を始めとした生活品や装飾品、鏡、仏像、釣り鐘、戦闘時の防護具や鉾、剣などが発見されています。大和政権下の古墳時代になると、さらに多くの青銅鏡が作られるようになっています。青銅製の遺跡物は、その後一般化した鉄器が錆びやすく形を残しにくいのに比べ、当時の形状を止めている物も多く、古代の政治状況や文化を知る上で貴重な資料といえます。

権威の象徴「古代鏡」:古代鏡の多くは青銅製で、皇位の象徴である三種の神器のひとつでもあることから、格別な扱い方をされてきました。鏡は古代の人たちにとって神秘的な存在で、左右対称とはいえ実像を映し出す鏡は、どこか別の世界との接点を持つ異様な物として見なされていたに違いありません。日本各地の遺跡から出土した銅鏡の成分%比を分析すると、古代の鏡は比較的銅の含有量が高いものが多いため、鏡面は黄金色に光り輝いていたのではないかとも推測されています。古代の邪馬台国についての唯一の資料である志倭人伝には、女王卑弥呼が魏王より鏡百枚を与えられていたとの記述がありますが、国内で発見される青銅鏡との関係は謎が多く、今後の研究の進展を待ちたいところです。

◇参考:小倉毅『青銅鏡をつくる:埼玉県理化研究会会誌』

◇サブタイトル:度胸のいる青銅鏡つくり

◇キーワード:金属光沢 合金


◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。




コメント一覧

返信2020年6月9日 2:39 PM

基礎化学・(Ⅰ):6/9(火)遠隔授業;授業NOTE_p15-16の内容 | らくらく理科教室23/

[…] 青銅は、銅とスズの合金で、人類が初めて作り出した合金とされている。その後、製鉄技術を持つ鉄器文明が続くが、鉄器に関する遺跡が乏しいにもかかわらず、それよりも古い青銅器が数多く発見されている。これはどのような理由によるものか、50文字以内で説明しなさい。(ヒント:錆び) 参考記事 → 青銅鏡をつくる […]

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