• 教材や実験の開発情報

天然の有機色素を用い、安価、製造工程が容易、しかも環境負荷が小さいといった新しいタイプの太陽電池「色素増感電池」が注目されています。エネルギーや環境、また光触媒効果や素材としての導電性ガラスなど、学習の幅を広げる教材となっています。


実験プリント版

「実験タイトル」色素増感太陽電池をつくる

「キーワード」二酸化チタン 半導体 波長 色素増感

「準 備」導電性ガラス2枚 ポリエチレングリコール(PEG) 二酸化チタン(微粉末) メンディングテープ ガラス棒 天然色素液 ヨウ素溶液(I2-KI) クリップ ワニ口リード線  ソーラーモータ

「操 作」web非公開

「画 像」導電性ガラスに二酸化チタンの薄層をつくる

 

薄い三層構造・簿弱ながら光を当てると電流が流れる

 

「注意事項」

  1. 焼き付けは、ガラスが軟化しない(約450 ℃)よう注意する。オーブンなら、300 ℃で30分程度焼けば良い。
  2. 陰極は、再利用できないが、陽極(炭素)は、炭素を落とせば二酸化チタン焼き付け用に転用も可能。
  3. 電解質のヨウ素液が乾燥しないように、ガラスセルの貼り合わせ部をエポキシ系樹脂で封じると長期間の使用が可能となる。

「解 説」

二酸化チタンが光により励起される:二酸化チタンが光により励起される部分は、光触媒と同じ原理です。有機色素が太陽光を吸収して励起状態となり、電子を酸化半導体である二酸化チタン(TiO2)に渡します。電子は、炭素電極上でヨウ素に渡り、イオンIが生成、ヨウ素は有機色素に電子を戻す役割を果たすことになりますが、電子が飛び出すことにより生じたホールh+が電解質側に移動するという考え方も成り立ちます。つまり、全体としては、光エネルギーを得ただけで物質には変化はなく、電子が一巡する回路が成立するのです。半導体である二酸化チタンを光励起するにはバンドギャップ以上のエネルギー(主に紫外領域)を持つ光を吸収しなければならないのですが、広い吸収波長帯を持つ有機色素を吸着させることによって、半導体の光吸収領域をより長波長側に広げることが可能となります。これが色素増感と呼ばれる作用であり、色素として天然の植物成分を用いることもできるので、これらのエネルギーサイクルを「疑似光合成」や「エコ電池」に見立てる向きもあります。

新しいタイプの太陽電池「色素増感型」

酸化チタンと色素、電解質溶液を組み合わせたもので、1991年にスイスのGratzelらによって開発されています。Si太陽電池に比べ材料や製造コストの面で有利で環境負荷も小さいとことから、次世代型太陽電池として期待されエネルギーや環境教育のための良教材として、広く発電の原理が紹介されるようにもなっているものです。特に、花や果実等の天然成分を用いるというユニークさもあって、より注目を浴びるようになっています。


▽このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。