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有機化合物は鉱物の一部には、光の振動面を回転させる性質(旋光性)を有するものがあります。砂糖(ショ糖:スクロース)水にその現象が見られるので、偏光板を使ってその旋光性を確認してみます。

「動 画」試験管を用いた簡単な演示

試験管で手軽な演示にしたのでちょっとわかりにくいですが、ショ糖の濃度によって色の変化のしかたに違いがあることがわかります。


「実験タイトル」偏光板でショ糖の旋光性を調べる

「サブタイトル」偏光板で旋光調べ

「操 作」(概要)

1.偏光板を2枚切り出し、互いの偏光面の差がわかるように目印になる色紙2色を端に貼っておく。2枚の偏光面が直交して暗くなったところで目印の紙の向きがそろうようにすると、直交90度からのずれがわかりやすくなる。

2.ビーカーを逆さにし、その上に偏光板の片方をセロテープ等で貼り付ける。別のビーカーを用意し、側面をガムテープや厚紙等でくるむ。上部のふちに、もう一方の偏光板を貼りつけ、2のガラスビンに重ねる。上から見て、下の偏光板が直接見える位置に少しガラスビンをずらしておくと、両方の偏光板の重なりかたがわかりやすくなる。

3.濃厚なスクロース水溶液を上のビンに入れ、2枚の偏光板が直交している部分は最も暗い状態だが、スクロースを透過して来た方(B領域)はまだやや明るい。

4.上の偏光板の角度を右回りに少しずらしていくと、次第に光に青みがかかり、紫色→赤紫色→黄色…というように、光が色づいて観察される。(実際にはいろんな波長が通過してくるため)

「解 説」スクロースが旋光性を示す:偏光面を90度ずらせてた偏光板を上から見ると、A領域は光が遮断されるので暗くなります。しかし、スクロース水溶液を通過してきた方(B領域)はまだ明るくなったままです。上の偏光板をさらに少し右に回転させると、ようやくB領域に暗さのピークがやって来ます。このとこから、ショ糖水溶液を通過した偏光面が、右方向にねじ曲げられているということがわかります。ただし、実際には2枚目の偏光板を回転させていくと、光の色が青→紫→黄のように色づいて見えます。これは、物質内を通過する光の位相差の残り方によって起こるもので、旋光の結果特定可視光が強調されてくることによります。(単波長を用いれば旋光角は正確に求められる)

2.鏡像体が光の振動面を変化させる:ショ糖のような有機化合物の中心炭素原子が4つの異なる基を持つ場合、その炭素原子を不斉炭素と呼びます。不斉炭素原子を含む化合物には、構造式で平面的には同じでも、左右鏡像の関係である光学異性体が存在します。この左右鏡像の関係にある化合物(L体とD体)は、光の振動面をそれぞれ左右方向に回転させる性質があり、偏光板による平面偏光面を右に回転(観察者から見て)させれば、+、左なら-を化合物名に付して表記することもあります。なお、L体とD体は左右同じ角度だけ偏光面を回転させる性質(光学的性質)を除けば、物理的化学的にはほとんど差がないとされています。(スクロースは右旋性で、比旋光度[α]=+66.5°を示します。比旋光度は、測定する光の波長、温度、層の長さ、濃度によって異なり、ナトリウムD線(589nm)を用い、20℃、旋光性物質1gが溶媒1mLに溶けている溶液の層1dmについての旋光角を基準としています。

3.光の振動面を限定する偏光板:光は進行方向に対して90度に振動する電磁波(直交する磁場と電場により構成)です。偏光板は、光の振動面を一方向に限定するもので、偏光板2枚を90度ずらせて重ねると、光の通過をほとんどシャットアウトすることができるのです。電卓の数字表示板やサングラス、3Dシアターの効果などに応用されています。

「確認演習」

  1. アミノ酸であるアラニンの基本構造を立体的に描き、左右鏡像体が存在することを示しなさい。
  2. スクロースは、比旋光度[α] = +66.5°である。光学的に右旋性のスクロースの化合物名を、LD+-等の文字を使い、正確に表記しなさい。
  3. 光は反射によってその振動面を変化させることがあるという。このことから、光が反射している池の水面をサングラスをかけて見ると、水中の魚が見えやすくなる理由を答えなさい。

▽参考:色が異なる砂糖水の…理科教育ニュース監修

▽監修担当記事:理科教育ニュース2019.4.18 → 少年写真新聞社

▽関連ページ:ビーズが壁を通り抜ける?偏光板マジック工作

▽関連動画:偏光板に挟まれた折り鶴がカラフルに輝く

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◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。





コメント一覧

返信2019年9月4日 12:28 PM

ショ糖も旋光性 | らくらく理科教室24/

[…] 参考:偏光板で旋光性を調べる […]

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