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水色の溶液の中に、ナマコか昆布のような物体がみるみる伸びていく様子が観察できます。金属イオンの反応によってできた半透膜が成長していくというものです。

「動 画」銅(Ⅱ)イオンバージョン

□数分で5㎝ほどに成長

「動 画」銅(Ⅱ)イオン・ニッケル(Ⅱ)のショートバージョン

□ニッケルの方は、成長が遅く細い柱状となります。

「解 説」

硫酸銅水溶液にヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウムの結晶を投入すると、銅(Ⅱ)イオンと鉄(Ⅱ)イオンが反応し、ゲル状のヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸銅 Cu2[Fe(CN)6] が生成します。

2Cu2+ + [Fe(CN)6]4- → Cu2[Fe(CN)6]

この物質は、半透性の膜として結晶を包み込むように形成されますが、結晶付近の濃度が高いため、周囲の水が膜内部に入り込んで浸透圧を保とうとします。浸入してくる水によって次第に膜内部の内圧が高まり、比較的水圧の弱い膜上部が破れやすい状態となります。ついに膜が破れて内部のヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸イオン [Fe(CN)6]4- が漏れ出すと、外部の水溶液中の銅(Ⅱ)イオン Cu2+ と反応し、新たな半透性の膜が形成されます。しかし、膜が形成されればまた水の浸入が起こり、膜内部の内圧が高まり、膜上部が破れるということが繰り返されます。結果として、半透性の膜が上方に向かって成長していくことになるのです。銅イオンの青色を背景にしてやや黄色味のある物体が伸びていくので、まるで海中でゆらゆらと動く昆布のようなイメージです。

濃度にもよりますが、肉眼でその成長が観察できるくらいの速度で成長し、数分でかなりの高さまで伸びていきます。硫酸ニッケルや塩化コバルトでも同様な現象を観察することができます。ニッケルイオンの場合は、細長い柱が数本並列して伸びていくことが多く、銅イオンの場合よりも成長は遅いです。なお、トラウベの人工細胞の名称は、この現象を発見したドイツの化学者Moriz. Traubeに由来します。


◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。




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