銅を火であぶると黒色の酸化銅(Ⅱ)となることはよく知られていますが、少し条件を変える深い赤色にすることができます。これは、緋銅(ひどう)と呼ばれ、伝統工芸として大切にされてきた技術です。
「解 説」
銅を加熱して空気にさらすと酸化銅(Ⅱ)の黒色被膜が形成されます。
2Cu + O2 → 2CuO
この反応を酸素との結合を制限した条件下で実施すると酸化銅(Ⅰ)の赤い被膜が形成されます。
4Cu + O2 → 2Cu2O
赤よりもやや深い緋色(炭火の色?)という感じで、古くから茶器や装飾に活用され、伝統工芸品として愛好されてきました。高度な技術ではあるので、実験操作としては簡素で安全な方法をとっています。
銅リングを炎の中心部(低温エリア)で加熱し、すぐさま四ホウ酸ナトリウム(Na₂B₄O₇ ⋅ 10H₂O:ホウ砂)水溶液に落とします。加熱された銅付近では、水が急激に加熱蒸発して、空間部分が出来上がります。観察すると、光の全反射によって一瞬銀色に輝いて見えますが、すぐに温度が低下し、銅表面に赤い膜が張られていきます。実際には少し時間差があって、「シュッ」と音を立てて、ゆっくり赤い塗料が塗られていくような現象を見ることができます。水洗いしたのち、ピカールなどで磨くと、表面の粗い部分が光沢を発するようになり、絶妙な色合いとなります。注意点としては、強熱し過ぎないことです。炎の上部だとガスバーナーでも十分に銅の融点に達してしまい、溶け始めてしまいます。また、加熱食後に空気に触れる時間がながいとすぐに黒い酸化銅(Ⅱ)が形成されてしまうので、すばやく四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)水溶液に「落とす」必要があります。経験的には、炎の中心よりやや下の還元炎で加熱するのがよいと思われます。また、銅板は扱いやすい穴あきリング状が良く、できれば縦に保持する方が全体の温度が均一に保てるようです。片面だけ炎に向けて加熱すると裏表で温度差ができてしまい、色合いに偏りができやすいようです。
応用編としては、銅パイプを切断して指輪のような形状にする方法があります。作品は十分に装飾品としての価値があるように思われます。
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、解説の一部を非公開にしてあります。操作には一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。
◇著書(単著):『サクッと!化学実験(dZERO)』『高校教師が教える化学実験室』『実験マニア(亜紀書房)』


