市販のプラスティック製ボールを用いて、少し大きめの迫力あるフラーレンモデルを製作しました。
「解 説」
1.簡単安価にできる物質モデル:原子のつながりが視覚的・立体的に理解しやすく、直径60 ㎝もあって迫力があります。全体の重量は約400 gと軽くて大きさの割には扱いやすく、釣り糸を使用してつり下げれば、空間に浮かせる感じになって見栄えも良いです。炭素原子の共有結合角、同素体で新素材についての理解を深めることができるでしょう。材料のボールは、大手玩具店のトイザらスで「ファンボール」という商品名で販売されているもので、100個で1000円以下で購入できるので安上がり。5色が混じっているので最低でも3セットを同時に購入することにはなりますが、色の違うフラーレンモデルをいくつも作ることができるので大変リーズナブルです。ただし、作成したフラーレンモデルは、構造を理解しやすくした球棒モデルです。球棒モデルは、原子を球、共有結合を直線で表現したもので、結合角と結合距離を表すことはできるが、原子の大きさは反映されていないことには注意します。
2.サッカーボール型C60:工作のモデルとした物質はフラーレンの中でも、サッカーボール型として最も有名なC60。建築家バックミンスター・フラーが設計した建物に似ているので、その名をとって、バックミンスターフラーレン(Buckminsterfullerene)とも呼ばれます。球体の直径は0.71nm、32面体(5員環12個と6員環20個)から形成される余った結合が出ない安定な構造で、60本の単結合と30本の二重結合が存在すると考えることもできます。炭素間の結合距離は、6員環と6員環が接するC-C結合は、0.139 nm、5員環と6員環は、0.143 nmで、グラファイトの0.142nmに近いのですが、電導性は小さくなります。
3.ノーベル賞の対象に:C60フラーレンの発見は1985年、クロトー・スモーリー・カールの3名によるもので、ともに1996年度のノーベル化学賞を受賞しています。個々のフラーレンは、毎秒108回以上の高速で回転し、化学反応性に富み様々な誘導体を形成することから、多分野での開発研究(樹脂、特効薬、化粧品、電子材料など)が進められています。なお、2010年に、フラーレン発見25周年を記念して、グーグル社がユニークなロゴを公開し、ロゴの中央で回転しているフラーレンが話題となりました。
◇岩田久道,ファンボールを使った物質モデルの製作についての情報提供
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、解説の一部を非公開にしてあります。操作には一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。
◇著書(単著):『サクッと!化学実験(dZERO)』『高校教師が教える化学実験室』『実験マニア(亜紀書房)』