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グルコースの還元性を用いて、銀を析出させます。

「動 画」グラスを用いる方法

「動 画」平面ガラスを用いる場合

「動 画」学生実験記録

「動 画」一般的な試験管を用いた場合


実験プリント版

「表 題」単糖類(グルコース)を用いた銀鏡反応の観察

「サブタイトル」緊張する銀鏡反応

「目 的」単糖類としてグルコースの還元性を利用し、鏡面上に銀を析出させる。

「実験理論」

銀鏡反応:反応メカニズムは次の通り…

硝酸銀水溶液にアンモニア水を加えると、一時的に少量の水酸化銀 AgOH の白色沈殿ができる。Ag+ + OH → [AgOH ]↓

この水酸化銀 AgOH は不安定で、すぐに酸化銀 Ag2O の暗褐色沈殿となる。

2Ag+ + 2OH → [Ag2O ]↓ + H2O

さらに過剰のアンモニア水を加えることで、沈殿は溶けて錯イオン[Ag(NH3)2] +を形成し水に溶解する。

Ag2O + 4NH3 + H2O → 2[Ag(NH3)2]+ + 2OH

これは[ジアンミン ]銀(Ⅰ)イオンであり、配位子の[アンモニア ]二分子により[直線 ]状の立体構造を構成する。

【立体構造】グルコースが関わる酸化還元反応:銀錯イオンが、グルコースのような[還元 ]性のある物質と反応すると、銀イオンが還元されて単体の銀が析出してくる。この水溶液はトレンス試薬とも呼ばれている。ガラス面に銀を還元・析出させたものを反対側から見ればガラス層を持つ鏡となるので、[銀鏡 ]反応と呼ばれている。

アルデヒド基を持つ化合物(一般式 RCHO) は、ジアンミン銀(I)イオンを[還元 ]し、自らは[酸化 ]されてカルボン酸(RCOOH)となる。

RCHO + 2[Ag(NH3)2]+ + 2OH→ RCOOH + 2Ag + 4NH3 + H2O

実験ではグルコースを用いたが、この糖は水溶液中で六員環構造(ピラノース型:二種類存在する)と鎖式アルドース型で[平衡 ]を保っている。鎖式アルドース型は、アルデヒド基を持っているので還元性を示すが、水溶液中では著しくその濃度(0.002%程度)が低いめ、還元反応は[ゆっくり ]進行していく。

アルドース型     ピラノース型(α・β)

(還元性あり)      (還元性なし)

紙などの燃焼は、激しくて素早い酸化反応が起こる。しかし、このグルコースのように還元型の成分濃度が極端に低いと、反応に必要な量の供給が間に合わない。動物が糖類(炭水化物)を食べて体内でグルコースに分解、酸化されていく反応がゆっくりである理由でもある。特に、このグルコースの平衡状態を保つ性質は、[生命 ]活動の特性に大きく関わっている。

ガラス面へのメッキ:金属表面への金属メッキは、同じ[金属 ]結合による親和性のため容易である。しかし、ガラス表面は、静電気的な偏りが小さいのでそれほど金属との親和性が大きくない。そこで、いったん錯イオンとして安定させておき、反応性の穏やかな還元性糖類を作用させる。

取り扱いに注意を要する:アンモニアが関与する合成反応では、爆発性の物質が生成することが少なくない。銀鏡反応で生成するアンモニア性の錯イオンも、分解・爆発のおそれのある物質である。つくり置きせず、分解する前に使い切ることや廃液で錯イオンを処理する必要がある。

「準備・操作」WEB非公開

「補足・注意事項」

  1. 硝酸銀にアンモニアを加えた試薬を事前に調製してはならない! → 爆発の恐れがある
  2. 廃液容器にはあらかじめ過剰の酸を入れておく。
  3. 大きめのガラス容器にメッキする場合は広口タイプが良い。

「観察・結果」

  1. B液の調整時に起こる変化の様子
  2. A液とB液を混合させた際の変化の様子
  3. 試験管を外側のガラス面から観察した際の様子

「考察のポイント」

  1. この銀鏡反応に関わるすべての化学変化を順に反応式にまとめる。
  2. 同じ還元性を持つアルデヒドを用いることもできるが、グルコースの方がきれいな銀鏡ができやすい。その理由をグルコースの特性を踏まえて論じる。
  3. アンモニア性錯イオンが残っている場合の廃液の処理方法について。

◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものがありますので参考になさってください。

  


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