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ある種の金属(を含む物質)を高温状態にさらすと、特定の光を発する「炎色反応」が観察されることがあります。簡素な実験として、メタノールを用いて燃焼させています。

「動 画」

「動画」学生実験での記録

「動画」いくつかの塩類を混ぜたもの

「動画」エタノールを使用した場合

メタノールの代わりにエタノールを用いていますが、橙色の炎が出て、炎色が目立たなくなります。


「解 説」

1.電子の振る舞いによる光:アルカリ金属、アルカリ土類金属、銅などの金属塩を炎に入れると、その金属特有の色を発することがあります。原子中の電子は、通常は基底の軌道に存在していますが、外部から与えられたエネルギーにより、外側の軌道に移動するということが起こります。これが励起状態であり、元の基底状態に戻る際に余ったエネルギーを光として観察されるものです。ただ、もともと電子は決まったいくつかの軌道にしか存在できないので、電子の持つエネルギーは、とびとびの特定の値にしかならないのです。つまり、放出される光エネルギーの波長も特定の色を放つものとなるのです。例えば、アルカリ金属Li、Na、Kにおける炎色反応は赤・黄・赤紫ですが、それぞれ励起された電子が基底状態に戻る際に発する光の波長が各色に相当するのです。ただし、カリウムのように2色の色が混じって観察されるというようなことはあります。

放出されるエネルギーEは、振動数νに比例し、エネルギーの差が大きいと光の振動数が大きく(波長は短く)なります。

E =  hν (h:プランク定数)

発する光の色は、赤→橙→黄→緑→青→紫の順に、エネルギーが大きくなります。ちなみに、人間に見える光(可視光線)の波長は、おおよそ400 nmから770 nmで、その範囲より短いものを紫外線、逆に長いものを赤外線と呼んでいます。

2.成分分析の一手法:炎色反応は、金属の定性分析や花火にも利用されますが、気体状の原子にまで加熱される必要があります。例えば、銅線を加熱するだけでは、原子が蒸発しないので、銅の炎色反応は観察されません。しかし、塩素との化合物(塩化銅)ならば融点が低いので、イオン結晶が熱により解離し、原子化しやすくなるのです。炎色反応の実験の試料に、塩化物が多用されるのはこういった理由によります。また、教科書の炎色反応の実験では、白金線が用いられていますが、それは白金が非常に安定でイオン化しにくく、融点(3825℃)も極めて高く他の金属イオンの観察の妨げにならなりからです。もっとも、実際の現場ではあまりに高価であるのが難点でもあります。安価な綿棒を使用して、同時に複数の炎色を観察できるように実践しているのですが、厳密には素材のパルプに、炎色を呈する複数の金属が含まれていることには注意が必要です。


◇監修映像:Yahoo!映像トピックス『美しすぎる化学』 → カラフルな5色の炎にうっとり「炎色反応」

◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものがありますので参考になさってください。


◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。




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