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サリチル酸とメタノールは脱水縮合によってエステルとなります。有機合成の定番で、合成される物質はスーッとした香りのするサリチル酸メチルで、鎮静作用を持ち湿布薬にも用いられてきました。

「動 画」還流管を用いて

□乾いた試験管にサリチル酸1.0g、メタノールを5mL、濃硫酸1滴、沸騰石3粒入れて、乾いた環流管をつけて加熱しています。5分加熱後、炭酸水素ナトリウムで不要な酸を中和すると、ビーカー底に樹脂状のサリチル酸メチルが確認できます。

「動 画」還流管を用いず湯浴で反応


「解 説」

サリチル酸C6H4(OH)(COOH)のカルボキシル基部-COOHとメタノール CH3OHのヒドロキシ基部-OHとの脱水縮合によるエステル化。典型的なエステル縮合による有機合成反応として広く知られています。

C6H4(OH)(COOH) + HO-CH3 → C6H4(OH)COOCH3

生成したサリチル酸メチルC6H4(OH)COOCH3は、スーッとした香りを放つ成分で、古くから関節痛や筋肉痛、打撲や捻挫などの症状をやわらげる外用の鎮痛・消炎薬として用いられてきました。

実験では、濃硫酸を加え酸触媒として作用させます。また、やや過剰気味にメタノールを加えておくことで反応物のサリチル酸を使い切るようにします。

反応後、未反応のサリチル酸や硫酸を炭酸水素ナトリウムで中和すると、容器の底に樹脂状のサリチル酸メチルがたまっているのが確認できます。これを薬さじなどですくい取り、ろ紙に付着させて匂いを嗅ぐと市販の鎮静剤のなじみのある匂いがしてきます。原料のサリチル酸とメタノールから別物の物質が生成したらしいことがわかります。

多くの実験書では、火気を用いた加熱方法が紹介されていますが、熱湯を移したビーカーでも十分に反応が進行します。その際に、沸騰石を入れておくと激しい泡の発生が観察されます。沸騰石は安全確保のために投入するものではありますが、反応の進行具合が視認しにくい有機反応において、ちょっとしたリアル感を醸し出す効果もあるようです。


◇実験タイトル:サリチル酸メチル_湿布薬

◇サブタイトル:失敗しない湿布薬

◇キーワード:フェノール カルボン酸 エステル化


◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。




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