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緊急措置:学生用遠隔授業についての指示は最後にあります 

理科教育法Ⅲスキルアップ実験

「実験タイトル」

電解質とコピー食品『イクラカプセル』

「学習項目」イオン結晶 電解質 電子配置 物質量 コピー食品 ゲル 半透膜 浸透圧 コロイド

「実験概要」

  1. アルギン酸ナトリウムは、分子内のカルボキシル基 -COOH の水素 H がナトリウム Na に交換されたもので、水に溶けて高い粘性を示す。このカルボキシル基の部分は、カルシウムイオン Ca2+ のような多価イオンとも強く結合し、水に不溶なゲル物質を作る。その独特な感触は、カプセルの周りだけがゲル化して硬くなり、内部は液体のままということとも関係ある。
  2. 材料のアルギン酸ナトリウムは、β-D-マンヌロン酸とα-L-グルロン酸が一定の割合で結合する多糖類の一種。β-D-マンヌロン酸とα-L-グルロン酸は、第六炭素に結合するカルボキシル基の立体配置だけが異なる光学異性体の関係にある。
  3. アルギン酸ナトリウムは、昆布などから採取される自然素材であり、様々な食品に使用されている。最近の食品の中には生鮮食品をまねた、いわゆるコピー食品が多く見られるようになった。かつて話題に取り上げられた「人造イクラ」も、実験のような方法でカプセルの中にエキスを封入して作られていたこともあったようだ。
  4. このようにして生成した膜は半透膜であり、動植物の細胞同様の透過性を示す。水分子やイオンのような小さな粒子は出入できるが、コロイド粒子のような比較的大きな粒子は通さないという性質で、半透性とも言う。内部にデンプンなどの大きな粒子を含む液を封入し水中に入れると、外部から水だけが入り込んでカプセルが膨潤状態となる。カプセル内でデンプンが熱運動して半透膜に衝突するものの膜を透過することはできず、膜をはさんで水との間に浸透圧を生じるからである。
  5. 生命誕生の鍵を握る:原始の海で生命がどのように誕生し、一定の構造を持つようになったのかは科学の世界での最大級の関心事。そのメカニズムは未だ明確には解明されていないが、このアルギン酸がカルシウムイオンとつくるゲル状物質が生命誕生における細胞形成の謎の鍵を握っているのではないかと考える研究者もいる。太古の昔、希有な条件が重なり淡水下で濃縮された分子群が、カルシウムイオンの存在する海水と接触し、細胞膜の原型を形成したのではないかというものだ。確かに希薄な海水よりも、限定された膜構造の中で種々のタンパク質が作られ、生命としての連続性が生まれたというアイディアは、説得力があるようにも思える。

「準 備」

塩化カルシウムCaCl2 1 g プラカップ2 割りばし アルギン酸ナトリウムNaC6H7O6 0.2g(薬さじ大半量) 食紅 ティッシュペーパー

「操 作」

  1. 塩化カルシウムCaCl2 1 g をプラカップに入れ、水を加えて全体を50mLとする。割りばし1本を使い完全に溶かしきる。(割りばしは使い回さない!)
  2. アルギン酸ナトリウムNaC6H7O62g(薬さじ大半量)を別のプラカップに、水を加えて50 mLとする。
  3. アルギン酸ナトリウム水溶液を割りばしを用いて、塩化カルシウム水溶液に一滴ずつ滴下していく。(1/3だけ使う)
  4. できあがったカプセルを手で取り出し、ビーカーに入れて観察する。そこに水をつぎ足した場合と比較する。
  5. のこりのアルギン酸ナトリウム液のもう1/3には食紅を少量加え、同様の操作で着色されたカプセルを作る。 → ティッシュペーパー上に取り出して観察する
  6. さらに残りの1/3には、イースト菌5 gを加えてよくかき混ぜて、同様の操作でカプセルを作る。
  7. ビーカー(100 mL)にグルコース05 gを入れて、約40℃に保っておく。
  8. イースト菌入りのカプセルをグルコース水溶液に加えて様子を観察する。

「注 意」

  1. 両方の液体が混ざると全体が固まってしまうことがあるので割りばしは使い回さないこと。
  2. うまく丸くならない場合は、アルギン酸ナトリウム水溶液に水を加えて粘り気や滴下する高さを調整する。
  3. できあがったものは食べないこと。

「動 画」

「観察・記録」

ゲル化の様子

「考察・教材研究」

  1. 塩化カルシウムについて:組成式を書きなさい。その電子配置を描きなさい。(イオン結合に注意)
  2. 浸透圧 Π を計算しなさい。ただし、T=27℃として、気体定数R=8.3×103〔L・Pa/(K・mol)〕とする。
  3. 透明カプセルを水に入れた際の観察からわかることを述べなさい。
  4. イースト菌・グルコース水溶液の観察からわかることを述べなさい。
  5. 教育課程上の位置づけは?
  6. 指導上の留意点

◇遠隔授業での設問

  1. 生成した膜により浸透圧が生じる理由を100文字以内で説明しなさい。
  2. この人造カプセルが生命誕生の鍵を握ると考えられる理由を100文字以内で説明しなさい。

◇遠隔授業としての指示:設問の回答をこの下のコメント欄に直接記入しなさい。出席確認機能も兼ねているので、可能な限り各授業時間内に回答すること。また、最初に「5/19・氏名」をわかるように記載すること。(内容は自動的に指導者に送られるがすぐには公開されない設定になっている)


コメント一覧

返信2020年7月13日 11:02 AM

廣田25/

5.19 廣 1.生成した膜は半透膜である。 半透膜の性質として、粒子の大きさによって、膜を通すもの通さないものがある。性質上、濃度の低い方から高い方へ移動するため、浸透圧が生じた。 2.自然に出来た半透膜が、海水などに触れることでイオンを取り込み、細胞が誕生し、それが分化を繰り返すことで成長、繁殖したと考えられるから。

返信2020年6月2日 10:45 PM

匿名24/

5/19 村 1.半透膜は水分子やイオンなどは出入できるが、コロイド粒子など比較的大きい粒子は通すことができない。内部にある大きな粒子は半透膜を通過できず、濃度を一定にしようと液体が移動しようとするため。 2.希有な条件が重なり淡水下で濃縮された分子群が、カルシウムイオンの存在する海水に接触し、細胞膜の原形を作成したと考えられるから。

返信2020年5月22日 2:19 AM

匿名24/

5/19 田 1.浸透圧は異なる濃度の水と半透膜によって生まれる。アルギン酸ナトリウムを水に溶かしたものを塩化カルシウムを溶かした水に入れたときに生成した膜が半透膜となり、その半透膜の内側と外側で溶液の濃度が異なるから。 2.実験のような環境が整えば自然界でも半透膜が生成され、浸透によりイオンなどが膜の中に取り込まれ様々なたんぱく質が作られてきたと考えることができるため。

返信2020年5月21日 5:47 PM

匿名24/

5/19・荒 遅れてすいません 1,カプセル内の大きな分子は半透膜を通過することはできないから、膜を挟んで水分子との間に浸透圧が生じる。 2,淡水で濃縮された分子群がカルシウムイオンを含む海水と接触して、細胞膜の原型を形成したとも考えられるから。

返信2020年5月19日 3:45 PM

5/19・芦24/

設問1. 生成した膜は半透膜であり、外部から水分子などの小さい分子が入り込むが、カプセルの内部にある比較的大きな粒子は熱運動を生じて半透膜に衝突しても透過することはできないから。 設問2. この人造カプセルの半透膜は、淡水下で濃縮された分子群がカルシウムイオンの存在する海水と接触し細胞膜の原型を形成したという考えを説得力のあるものにするから。

返信2020年5月19日 3:32 PM

24/

5/19 吉 ①生成した幕の性質により、水分子やイオン粒子などの小さな粒子は入出できるが、大きい粒子は入出はできない。今回の実験では内部にデンプンなどの大きな粒子を含む液を封入し水中に入れたので、膜の外部から水だけが入り込んでカプセルの中は満たされた状態となる。膜の内部ではカプセル内でデンプンが半透膜に衝突するものの膜を透過することはできず、膜をはさんで水との間に浸透圧を生じるから。 ②太古の昔淡水下で濃縮された分子群が、カルシウムイオンの存在する海水と接触し、細胞膜の原型を形成したと考えられているから。海水の中で生き物が成長したと考えるよりも、生成された膜の中で濃縮された分子群が生き物の始まりとなったと考えるほうが説得力がある。

返信2020年5月19日 3:15 PM

匿名24/

5.19佐 1、生成した膜は半透膜であり、小さな分子のみ通り抜けることができる。この膜を挟んで濃度の違う液体同士を向かい合わせると溶媒は膜を通過できるが溶質は通過できない。拡散の原理のように濃度の低い液体から高い液体へ溶媒が移動しようとするので、浸透圧差が生じる。 2、膜をつくって外界と隔てることができれば、内部に成分を留めておいたり、外部の影響を受けずに生命維持に必要な化学反応を起こすことができる。また半透膜であるので、水分や小さな分子であれば内部で不要になったものを排出したり、必要なものを外部から取り入れたりすることができるからだと考える。

返信2020年5月19日 3:06 PM

はたけ24/

5/19畑 1.塩化カルシウム水溶液の濃度がアルギン酸ナトリウム水溶液に比べ濃度が低いため溶媒である水が塩化カルシウム水溶液からアルギン酸ナトリウム水溶液のほうへ流れ込むため。 2.細胞膜で作られたカプセルの中にリン酸などの生命を構成する物質を注入することによって生命が誕生するか実験できるため。

返信2020年5月19日 2:55 PM

匿名24/

5/19 秋 1.生成した膜は半透膜であり、半透膜は粒子の大きさに応じて粒子を通したり通さなかったりするため。 2.アルギン酸(分子群)とカルシウムが含まれる海水から細胞膜が形成されたと考えられるため。

返信2020年5月19日 1:50 PM

24/

5/19 ハマー 1.半透膜ができると溶媒は半透膜を通ってどちらへも移動するが、低濃度側から高濃度側へ移動した方がエントロピーが増加するためこの方向の移動が多くなり、高濃度側の液面が高くなるので浸透圧が生じる。 2.今回の人造カプセルの原理が、「コアセルベート説」とほぼ同じメカニズムだから。

返信2020年5月14日 11:39 AM

さいえんすヨージ25/

前回の更新時(5/9)に、出席・レポート提出機能として追加の指示をしました。今後、期間延長など、状況が流動的であるため、まめに情報をチェックしてください。なお、出席確認機能も兼ねているので、各授業時間内に回答してください。

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