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アルギン酸のアルカリ塩に混ぜ込んだ酵母菌の発酵によりエタノールが生成します。

□糖分として黒糖を使用しています


「解 説」

1.カプセル中でアルコール発酵:バイオカプセルの周りに二酸化炭素の泡が発生し、水面に浮上して泡を放してはまた水中に戻るを繰り返すのが観察されます。酵母菌の生命活動自体が目に見えるわけではありませんが、いかにも反応が起こっているというリアリティー感はあります。酵母菌のような微生物が、糖を分解して二酸化炭素とエタノールのようなアルコールを生成する活動をアルコール発酵といい、そこから得たエネルギーで生命を維持しています。体内では、嫌気性下で起こる反応で、酵素チマーゼの働きにより酸素は関わりません。

 C6H12O6 → 2CO2 + 2CH3CH2OH …アルコール発酵

この反応の過程で得られる、234 kJの熱エネルギーにより、ATP(アデノシン三リン酸)が生成され、生命が維持されるのです。

2.不溶性のゲル化膜が生成する:アルギン酸は、天然コンブに含まれる多糖類として知られ、食品化学をはじめ様々な分野で利用されています。カルシウムイオンを含む水溶液に滴下すると、カルボキシル基部のナトリウムイオンがカルシウムイオンと交換され、水不溶の球状カプセル状のゲルが作成してきます。

  2RCOONa + CaCl2 → (R・COO)2Ca + 2NaCl

アルギン酸ナトリウム       アルギン酸カルシウム

   (粘性大)             (ゲル状)

食品の中には生鮮食品をまねた、いわゆるコピー食品が見られるようになっていますが、ときに話題となる「人造カプセル」もその一例です。カプセルにエキスを封入すると、本物に近い味が表現できるようです。また、この実験のように酵母菌を混ぜ込んで、アルコールを生産する機能を「バイオリアクター」、生産されるアルコールは「バイオエタノール」と呼ばれ、新しい燃料源としてその活用に期待が広がっています。


◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、解説の一部を非公開にしてあります。操作には一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。

◇著書(単著):『サクッと!化学実験(dZERO)』『高校教師が教える化学実験室』『実験マニア(亜紀書房)


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