亜鉛-銅によるダニエル電池を作成し、放電による金属表面の変化を観察します。
「動 画」基本操作編
□リード線やモータは濡らさないように。終了後は、金属板の表面をきれいに磨いて保管します。
「解 説」※以下、実験プリント補足編!
ダニエル電池の金属板付近では、亜鉛が電子を放出し亜鉛イオンとなり、銅イオンは電子を受け取り単体の銅に還元されます。
Zn → Zn2+ + 2e– …①
Cu2+ + 2e– → Cu …②
それぞれの標準酸化電位を含めて電気化学的にみると…
Zn2+ + 2e– = Zn – 0.762V_EZn
Cu2+ + 2e– = Cu + 0.340V_ECu
酸化電位の差は E = ECu – EZn より、
Cu2+ + Zn = Cu + Zn2+ + 1.102V
この酸化電位 +1.102 V が、ダニエル電池の理論起電力となります。電池式は、電解液を組み合わせて…
(-)Zn|Zn2+・ZnSO4 | CuSO4・Cu2+|Cu|(+)
電池性能の低下について…化学電池は放電の進行によって化学反応の[速度 ]が低下し、劣化は電圧[降下 ]というかたちで表れます。その主な要因としては…
〇活物質濃度低下:反応に関わる化学物質の濃度が[低下 ]する。特に電極付近で起こることによる。
〇イオン伝導度の低下:電解質内の[ イオン ]の移動速度が低下する。電解質膜の劣化もイオン伝導度の低下をもたらす。
〇電極活性の低下:電極表面の[触媒 ]機能が低下することによる。
電池性能の測定について…最も簡便な方法として電池の内部抵抗の測定があります。内部抵抗 r は、開放電圧Eの電池に抵抗 R をつないで実際に電流を流した時にかかる電圧降下の割合で、V = [E-rI ]で表すことができます。また、抵抗にかかる端子電圧はオームの法則 V = RI により求まります。
V = E-rI V = RI
電流 I を消去すると内部抵抗 r は、
r = R[(E/V)-1]
この内部抵抗rが、電池性能を判断するバロメータとなるのです。
回路に流れた電気量について…金属板の質量の変化から移動した電子の量がわかります。1molの物質量に相当する電子の電気量は、約96485〔C〕とわかっている(ファラデー定数)ので、おおよその電気量を算出することができるのです。移動した電子の量をn〔mol〕とおくと、
電気量:Q = n(電子の量)×96485〔C〕
しかも、電気量Q は、電流I〔A〕が流れ続けた時間t〔s〕の積でも表現されるので、
電力量:Q=It〔C〕
したがって、電気を流していた時間がわかれば、平均的に流れていた電流値も算出可能となります。
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、解説の一部を非公開にしてあります。操作には一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。
◇著書(単著):『サクッと!化学実験(dZERO)』『高校教師が教える化学実験室』『実験マニア(亜紀書房)』