基礎化学実験_実験NOTE
「表 題」銅板への亜鉛メッキ形成と加熱による合金の生成
「目 的」亜鉛を銅板表面に還元析出(メッキ)させる化学変化と加熱溶融による合金の生成を観察する。
「動 画」実践記録
「実験理論」
- 亜鉛の還元析出:[両 ]性元素である亜鉛は、塩基である水酸化ナトリウムと反応して酸化され、テトラヒドロキソ亜鉛(Ⅱ)酸ナトリウムイオン [Zn(OH)4]2-を生成(①)する。生じた電子は水分子と反応し、水素が還元されて(②)発生する酸化還元反応が成立する。しかし、銅板を浸すことで未反応の亜鉛側から電子が供給されてくる(局部電池ができる)ため、①の逆反応も起こってしまう。亜鉛も還元されて析出してくるのである。
- Zn + 4OH– ⇄ [Zn(OH)4]2- + [2e– ]
- 2H2O + 2e– → [H2 ]↑ + 2OH–
銅板は単に電子の受け渡しをしているだけで、酸化還元反応には無関係である。また、②の反応は、塩基性が強すぎるため右辺のOH–の生成にブレーキがかかりやすい。結果として、①の逆反応が量的には上回ってしまうものと考えられる。
- 合金が生成する:銅の表面に析出した亜鉛は銀色に輝き美しい金属[光沢 ]を放つ。亜鉛の融点は約[420 ]℃、銅は[1083 ]℃、亜鉛のメッキができたところを加熱すると、溶けた亜鉛に固体の銅板の表面の一部が溶け込んで[合金 ]ができると考えられている。この合金は、[黄銅 ]または真鍮(しんちゅう)として古くから知られ、黄金色をしているので、様々な装飾品に用いられてきた。
「準 備」100mLビーカー 水酸化ナトリウム約7g 薬包紙 亜鉛粉末2 g ガスコンロ 温度計 銅片3枚 ピンセット ペーパー テープ
「操 作」
- 100mLビーカーに水酸化ナトリウム約7gとり、水を加えて全体量を30mLとする。
- 薬包紙に亜鉛粉末2gを取り、水酸化ナトリウム水溶液に入れる。
- ガスコンロで亜鉛-水酸化ナトリウム水溶液を加熱する。温度計を用いて約80℃に保っておく。
- 銅片2枚をビーカーに入れ、ピンセットを使い銅片を揺り動かして、反応が均一に起こるようにする。
- 加熱をいったんやめる。(消火せず、弱火のまま保つ。)
- 光沢色の変化が落ち着いたら、ピンセットで銅片を取り出し、流し場で水洗して汚れを取る。ピンセットも同時によく洗い、ペーパーで水気を取る。
- 銀色になった金属片を1枚選び、ピンセットで火の上に軽くかざして加熱する。少し色に変化し始めたところで、火から離して空気中で放冷する。
- 完成品を実験NOTEにテープで貼りつける。
「工夫と注意・片付けなど」
- 保護メガネ必須
- 温度計は一度用いるだけで十分であり、使用後すぐに流しで洗浄する。
- 銅板を火に入れるときは焼きすぎないようにし、手で触らないこと。
- 出来上がり品をこのプリントにテープで貼り付けること。
- 水酸化ナトリウム廃液はタンクに廃棄、ビーカー底に残った亜鉛粉末は、水酸化ナトリウム水溶液部分を洗い流した後、指定の金属製容器に廃棄する。
「観察・結果」
- 実験操作図説:NaOH水溶液加熱時の温度計の取り扱い・ピンセット使用・金属板加熱方法などの注意点も。
- 完成品添付
「考 察」
- 0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を30mL調製したい。固体の水酸化ナトリウム何gに水を加えて全体を30mLとすればよいか?
- 亜鉛が還元されて単体析出メカニズムを説明しなさい。
- 加熱により生成した物質は何であると考えられるか?
- 実験後の亜鉛粉末を回収する理由について説明しなさい。
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものがありますので参考になさってください。
