炭酸アンモニウムの白色結晶を加熱すると、熱分解によりアンモニアと二酸化炭素が発生してきます。発生してきたアンモニアと二酸化炭素を別々にトラップして、BTBの色変化によって確認するというものです。
「動 画」学生による編集
「動 画」2個のフラスコにBTBが仕込んである
「解 説」
炭酸アンモニウムを加熱すると次のような熱分解が進行します。
(NH4)2CO3 → 2NH3 + H2O + CO2
発生する気体のうち、まず水に溶けやすいアンモニアが1番フラスコの水にトラップされます。BTB(中性で緑色)が青色に変化してアルカリ性を示すことから、発生してきたアンモニアが溶解したことがわかります。次に、二酸化炭素ですが、これはアンモニアほど水に溶けないので、その大部分は1番フラスコをスルーして2番目のフラスコに達するというものです。2番目のフラスコのトラップにもBTBを仕込んであるので、こちらは緑色から黄色に変化するわけです。
試験管の端にたまった水は、塩化コバルト紙によって水であると確認することができます。また、白色結晶の炭酸アンモニウムが、熱分解によって完全に消失してしまい、BTBの色変化とともに、視覚的にわかりやすい化学変化であるといえます。
なお、実際にはなかなか先述の説明の通りにならないことがあります。それは、加熱を始めると試験管内に溜まっていたアンモニアが先に出て2番目のトラップまでも青くしてしまうのです。さらに、すぐに発生した二酸化炭素が後追いで1番目のトラップのアンモニアを中和してしまうので、いったん両方とも黄色くなるという現象も観察されることがあるのです。動画では、熱分解によって生成したアンモニアと二酸化炭素の影響が全体を支配して安定するのに、1分くらいかかっています。
このように、当たり前に設計した定番の実験でも、実際に操作してみるといろいろな側面から考察が可能になることがあるということを示す魅力的なテーマとなっています。
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。