美しいスズ樹がすさまじいスピードで成長していく様子が観察できます。
「動 画」乾電池を用いての電析
□数秒単位でぐんぐん金属樹が伸びていきます
「解 説」
スズよりもイオン化傾向が大きな金属との組み合わせで、陽子にスズ樹を析出させることができます。塩化スズ水溶液に亜鉛板を投入すると、次の反応により、イオン化傾向がより小さいスズ Sn が還元析出されます。
Zn → Zn2+ + 2e–
Sn2+ + 2e– → Sn
乾電池を用いた簡素な電気分解により、より大きく結晶形の繊細なスズ樹をつくることができます。その析出の速度はすさまじく、銀樹の場合とは比較できないくらいのスピードで進行していきます。動画のようにシャーレ程度の大きさの容器を用いた場合は、数十秒~数分で析出が完了してしまいます。なお、スズ樹の先端付近では、きれいないわゆるフラクタル構造も観察することができます。
動画では、SnCl2・2H2Oを水に溶解させると、Sn(OH)Clの白色沈殿が生成していることがわかります。
SnCl2 + H2O ⇄ Sn(OH)Cl + HCl
これに塩酸を加えると平衡は左に移動し、透明になるのです。陰極では、強制的に還元析出が促され、陽極付近には白濁が見られます。これは、ステンレス製のクリップが溶けにくく 2Cl– → Cl2 + 2e– が優先して起こるからです。クリップ付近の塩酸濃度が低下することで平衡が右に移動し、Sn(OH)Clが生成してくることがわかります。
単体スズの融点は低く約232℃、軟らかく加工するときにスズ鳴きという独特の音を出すことでも知られています。合金としては、楽器(パイプオルガン)やメッキ(ブリキ)など幅広い用途があります。
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、解説の一部を非公開にしてあります。操作には一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。
◇著書(単著):『サクッと!化学実験(dZERO)』『高校教師が教える化学実験室』『実験マニア(亜紀書房)』