すさまじい速さで美しいスズ樹が伸びていく様子が観察できます。
「解 説」
スズよりもイオン化傾向が大きな金属との組み合わせで、スズ樹を析出させることは容易です。例えば、塩化スズ水溶液に亜鉛板を投入すると、次の反応により、イオン化傾向がより小さいスズ Sn が還元析出します。
Zn → Zn2+ + 2e–
Sn2+ + 2e– → Sn
この反応は、目視できるくらいで進行していきますが、電気分解によると、さらにより大きく結晶形の繊細なスズ樹をつくることができます。しかも、その析出の速度はすさまじく、数分で析出が完了してしまいます。なお、スズ樹の先端付近では、いわゆるフラクタル構造も観察できます。
スズの融点は低く約232℃、軟らかく加工するときにスズ鳴きという独特の音を出すことでも知られています。合金としては、楽器(パイプオルガン)やメッキ(ブリキ)など幅広い用途があります。
動画では、SnCl2・2H2Oを水に溶解させると、Sn(OH)Clの白色沈殿が生成しています。
SnCl2 + H2O ⇄ Sn(OH)Cl + HCl
これに塩酸を加えると平衡は左に移動し、透明になるのです。陰極では、強制的に還元析出が促され、陽極付近には白濁が見られます。これは、ステンレス製のクリップが溶けにくく 2Cl– → Cl2 + 2e– が優先して起こるからです。クリップ付近の塩酸濃度が低下することで平衡が右に移動し、Sn(OH)Clが生成することがわかります。
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。