「アンモニアの赤い噴水」は、フラスコ内に勢いよく飛び出してきた水が赤々と染まるというものです。定番実験としてよく知られていますが、準備や操作にやや手間取るので、敬遠されやすいテーマでもあります。
「動 画」試験管から直接捕集する簡単バージョン
「動 画」大きめのビーカーを用いたバージョン
「動 画」小さなフラスコバージョン
□古い映像ですが。呼び水がきっかけになってフラスコ内が一気に減圧される様子がわかります。
「解 説」
古典的な化学実験:いわゆる「アンモニアの赤い噴水」として古典的な定番化学実験として知られていますものです。弱塩基の遊離によって生成したアンモニアガスを誘導し、水に吸収させるとフラスコ内が減圧されます。細いガラス管を用いると、さらにその減圧の効果を補おうとしてフラスコ内に水が勢いよく噴き出してくるのですが、同時に事前に加えておいたフェノールフタレインが発色するので視覚的効果は絶大です。フラスコ内に少量の水があれば、そこにアンモニアが吸収されるため、フラスコ内が減圧されます。減圧分を補おうとして、フェノールフタレイン入りの水が勢いよく引き上げられ、噴出が観察されるというものです。
水に吸収されやすい:アンモニアは、25℃において、1 mLの水に、体積で実に600 mL以上も溶解します。アンモニア分子は、三角錐構造をしていますが、1組の非共有電子対を持っています。水は直角に近い折れ曲がった構造をしていて、2組の非共有電子対を持っています。アンモニア分子も水分子も、非共有電子対を含めると、正四面体構造の頂点に電子対を持った構造となり、お互いによく似ているということがわかります。似た構造ゆえよく混ざりやすい、よく溶け合うと考えることができます。
アンモニアガスの遊離:塩化アンモニウム NH4Cl と水酸化カルシウム Ca(OH)2 の混合物を加熱すると、弱塩基の遊離が起こり、アンモニア NH3 が発生します。
2NH4Cl + Ca(OH)2 → CaCl2 + 2NH3 + 2H2O
生成したアンモニアは、分子量 17 の軽い気体なので、上方置換によって捕集します。アンモニアの生成の確認としては、リトマス紙やpH試験紙でも容易に確認できます。実験では、アンモニアを乾燥させるためのソーダ石灰管を省略するなど、器具使用を最小限にしたコンパクトな方法を紹介しています。丸底フラスコは完全に乾いたものを使用し、ガラス管はフラスコの奥深く差し込んで、空気を排除しておくと良いでしょう。ただし、装置が不安定なので無理せずスタンドを用いることを推奨しています。また、アンモニアガスは発生するので換気に十分注意することが必要です。
水に溶解して弱塩基性を示す:アンモニアは、水に溶解して、水酸化物イオンを生じます。水素イオンは、アンモニア分子の非共有電子対に配位して、アンモニウムイオンを形成しますが、この際の水分子は、水素イオンを与える酸としての役割を果たしています。アンモニア水のpHは10~11程度で、これはアンモニアが水に溶解する際の電離定数と水のイオン積から求めることができます。
NH3 + H2O → NH4+ + OH–・・・電離定数 Kb = 1.8×10-5〔mol/L〕
H2O → H+ + OH–・・・水のイオン積 KW = 10-14〔mol/L〕2
〔OH–〕= √CKbの対数をとってpOHを出し、14からpOHを引けば良い。
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。