「アンモニアの赤い噴水」は、フラスコ内で赤く染まった液体が噴水のように勢いよく飛び出してくるもので、定番実験としてよく知られています。
捕集したアンモニア(気体)は、水に溶けやすく、水に対し約600倍もの体積が吸収されます。フラスコ内に少量の水があれば、そこにアンモニアが吸収されるため、フラスコ内が減圧されます。減圧分を補おうとして、フェノールフタレイン入りの水が勢いよく引き上げられ、噴出が観察されるというものです。
アンモニア分子は、分子構造を極性の観点から見ると、水分子(非共有電子対も含め)と形がよく似ているため、水とよく混じり合うのです。水溶液がアルカリ性を示すことについては、水分子の水素イオンがアンモニア分子の非共有電子対に配位しやすいことによります。
「動 画」古い映像です:呼び水がきっかけになってフラスコ内が一気に減圧される
アンモニアガスが発生するので換気に十分注意が必要です。また、丸底フラスコは完全に乾いたものを使用し、発生した気体を乾燥させるにはソーダ石灰管を付けるとベターです。なお、 アンモニアガスの上方置換では、ガラス管をフラスコの奥深く差し込んで、空気を排除しておくと良いで□〒。
「解 説」
1. アンモニアが発生する:塩化アンモニウム NH4Cl と水酸化カルシウム Ca(OH)2 の混合物を加熱すると、弱塩基の遊離が起こり、アンモニア NH3 が追い出され、正塩 CaCl2 と水 H2O も生じます。
2NH4Cl + Ca(OH)2 → CaCl2 + 2NH3 + 2H2O
生成したアンモニアは、分子量 17 の軽い気体なので、上方置換によって捕集します。アンモニアの生成の確認としては、リトマス紙やpH試験紙でも容易に確認できます。なお、アンモニアのpHは、アンモニアが水に溶解する際の電離定数と水のイオン積から、10~11程度であることは算出することができます。
NH3 + H2O → NH4+ + OH–・・・電離定数Kb=1.8×10-5〔mol/L〕
H2O → H+ + OH–・・・水のイオン積KW=10-14〔mol/L〕2
〔OH–〕=√CKbの対数をとってpOHを出し、14からpOHを引けば良い。
2. アンモニアは少量の水にたくさん溶解する:アンモニアは、25℃において、1 mLの水に、実に600 mL以上も溶解します。アンモニア分子は、三角錐構造をしていますが、1組の非共有電子対を持っています。水は直角に近い折れ曲がった構造をしていますが、2組の非共有電子対を持っています。アンモニア分子も水分子も、非共有電子対を含めると、正四面体構造の頂点に電子対を持った構造となり、お互いによく似ているということがわかります。似た構造ゆえよく混ざりやすい、よく溶け合うと考えると都合が良いのです。
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。