水を加えるだけで熱が発生し、蒸気で卵が焼き(蒸し?)あがります。これは、携帯用の弁当や飲み物の保温にも利用されています。
「実験テーマ」反応熱で卵を焼く!
「キーワード」反応熱 熱化学方程式 塩基性酸化物
「準備物」酸化カルシウム(新品) 紙コップ アルミホイル ウズラの生卵 フェノールフタレイン試薬
「操作」WEB非公開
「注意事項」
「解 説」
水と激しく反応して熱を発生:駅弁や飲みもので、紐を引くと発熱して温めるしくみの商品を目にすることがあります。ライター不要、煙も出ないため、火を使えない状況や火に弱い素材に入っている食品を温めるのに便利です。これは、酸化カルシウム CaO の反応性が高く、水と激しく反応して熱を発生する性質を利用したものです。
CaO + aq = CaOaq + 65 kJ
この熱化学方程式を単純に用いると、酸化カルシウムの量と沸騰させることができる水の量の関係をすることができます。m〔g〕の水をΔT℃上昇させて、100℃にしたとすると、そのエネルギー Q〔J/mol〕 は、比熱4.2〔J/gk〕なので、Q = 4.2×m×ΔT。コーヒー1杯250〔g〕分、水温20℃の水を100〔℃〕にまで温度上昇させる場合は、次のように考えることができます。
Q = 4.2×250×(100-20) J
= 84000 J
= 84 kJ
次に、この84〔kJ〕を、水酸化カルシウム Ca(OH)2 の生成熱で得るために必要な酸化カルシウムの質量x〔g〕を考えます。酸化カルシウムの式量40+16=56から、56〔g〕を使用すれば65〔kJ〕の熱が発生することになります。
56 : 65 = x : 84 より x ≒ 72 g
つまり、酸化カルシウム CaO を72〔g〕あれば、沸騰寸前のカップ一杯のコーヒーを用意することが可能になるわけです。実験で使用した28〔g〕の酸化カルシウムでも、卵焼きができる理由がわかります。
CaOは反応性の高い塩基性酸化物:酸化カルシウムは CaO は、一般的に生石灰と呼ばれています。生成物の水酸化カルシウム Ca(OH)2 の消石灰と区別するため、読みは「きせっかい」「なませっかい」と呼ばれることもあります。炭酸カルシウムを強熱して二酸化炭素を放出させることで得られます。水を加えると発熱して、水酸化カルシウムとなります。フェノールフタレインの滴下により赤紫色に呈したのは、この水酸化カルシウムが水に溶解して、電離により水酸化物イオンが生成するからです。
Ca(OH)2 → Ca2+ + 2OH–
酸化カルシウムは、乾燥剤や殺虫剤、製鋼用素材、セメント原料、陶磁器、ガラスの副原料にも使われています。
◇参考 → 酸化カルシウムと水の激しい反応:大量の反応熱が発生してくる:溶解熱
◇このブログで発信している実験は、取扱いに注意を要する試薬・器具も含まれています。また、操作自体に一定のスキルを要しますので、記事や映像を見ただけで実験することのないようにお願いします。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものがありますので参考になさってください。