同濃度同体積の酸とアルカリの水溶液を混合して中和すると、全体量の体積は少し増えてしまいます。
「動 画」準備中!
「サブタイトル」中和した増(ぞう)~
「操 作」
- 500 mLのメスフラスコ2本に水を正確に500 mLずつとり、1 Lのメスフラスコ(内部をあらかじめ水で濡らしておく)に注ぎ込む。
- 1 Lのメスフラスコの標線に注目し、混合した水の水面の高さのずれの度合いをビニールテープで記録した後、水を捨てる。
- 同濃度の(1 mol/L程度)で同体積(500 mol/L)の塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を、それぞれ500 mol/Lのメスフラスコに準備する。
- 1 Lメスフラスコに3の塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を注ぎ込む。
- 混合後の体積量を確認する。
「実践上の工夫点」
- 始めの操作で1 Lメスフラスコ内部を濡らしておくのは、引き続き行う実験で同じフラスコを使用するので、内部に付着残存する水の影響を考慮するためである。
- 中和熱による熱膨張の影響を排除するためには、十分時間をかけて室温に戻るのを待つか、水槽て一定温下で行うかする。
- 酸とアルカリの水溶液にはBTBなどで着色しておくと観察しやすい。 → 体積の変化にはほとんど影響しない
「解 説」
この実験は、反応の前後で水和するイオンの数に大きな変化がある場合の体積変化を観察しようというものです。一般的に、電解質におけるイオンは、溶媒である水分子を引きつけて安定し、純粋な水どうしの場合よりも、周囲の水の構造が少し緻密になって詰まっていると考えられます。
塩酸と水酸化ナトリウムの場合、反応前のイオン数は、それぞれが電離して…
HCl → H+ + Cl– NaOH → Na+ + OH-
中和により、これらのイオン種のうちH+とOH–はほとんどが失せてしまい、H+とOH–に引きつけられていた水分子が開放されることになります。実験では、1 mol/Lどうしの反応で約10 mLもの体積増が観察されました。熱や内壁の水分の影響は考えねばなりませんが、それらを無視できるほどの大きな変化となります。
「演 習」
- それぞれの500 mLのメスフラスコ中に存在するイオン種の名称と化学式をすべて書き出しなさい。
- 水溶液中で、イオンが水に囲まれて安定している様子をイメージとして描き表しなさい。陽イオンと陰イオン、それぞれの場合について描きなさい。
- それぞれのメスフラスコ中の水溶液を混合した際に起こる反応を化学反応式で表しなさい。
- この反応のことを一般的に何というか、また反応により生成する化合物を何というか答えなさい。
- 混合の前後でイオン種の濃度はどのように変化するか、1であげたすべてのイオンについて、濃度の変化を表にまとめなさい。
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、解説の一部を非公開にしてあります。操作には一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。
◇著書(単著):『サクッと!化学実験(dZERO)』『高校教師が教える化学実験室』『実験マニア(亜紀書房)』