プラスティックに直接メッキするのは難しいので、表面にアンカーをかける方法をとります。フミン酸でペットボトルの表面を親水化、銀コロイドを触媒核として付着させたのち、塩化金酸を作用させていくというものです。アスコルビン酸が作用して金を還元します。
「動 画」PETボトルの内側に無電解金メッキ
「動 画」振っているうちにメッキがどんどんできていく
「解 説」
プラスティック面へのメッキ:トタンやブリキのように金属表面に別の金属をかぶせるメッキは、同じ金属結合による親和性のため容易です。化学実験では、ガラス面へのメッキも頻繁に実施されますが、プラスティックのように静電気的な偏りが小さいものだと、金属との親和性が低いのでメッキを施すのは簡単ではありません。そこで、前処理としてプラスチック(ペットボトル)表面に、いったんフミン酸のような有機化合物を塗布し、さらに有機化合物と金属の両方に親和性を持つスズを付着させておきます。さらに、銀コロイドを触媒核として付着させ、ひっかかり(アンカー)のような役割を持たせることで、プラスチック面への金メッキを容易にすることができるのです。
塩化金酸を用いて金メッキ:塩化金酸 テトラクロリド金(Ⅲ)酸四水和物HAuCl4・4H2O は、淡黄色針状結晶で水に溶けて黄色のテトラクロリド金(Ⅲ)酸イオン[AuCl4]− を生じます。このイオン [AuCl4]− は、四配位の平面四角形、水溶液は橙黄色。このテトラクロリド金(Ⅲ)酸イオン[AuCl4]−中の金(+Ⅲ)原子が、アスコルビン酸(ビタミンC)によって還元される。(メカニズムはやや複雑であるため簡略して示す)
Au3+ + 3e– → Au
金は安定した元素:金はイオン化列の最右に位置し、最も酸化されにくい金属として知られています。教科書等でも、例外的に王水(濃塩酸:濃硝酸)だけには溶解するかのような特別な扱いを受け、王水との反応は塩化錯イオン [AuCl4]– の形成までが扱われていることが多いようです。
透過光:ボトルの内側から光を通してのぞいてみると、青い透過光が観察できます。
「参 考」魅せる化学の実験授業(東洋館出版社)担当:藤田勲
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。