• 教材や実験の開発情報

簡易的な霧箱を用いて、安全な線源から放射線の飛跡を観察します。放射線それ自体を見ることはできませんが、放射線が通過したところに飛行機雲のような飛跡から、その存在を確認できる教材です。

「動 画」ドライアイスでエタノールを冷やし、容器内の蒸気密度を高く保ちます。

黒紙をバックにときどき白く細長い煙が、放射線が通過して生じるエタノールの霧です。塩化ビニール管をこすって静電気を起こした瞬間によく現れていました。

「動 画」学生による解説

「動 画」専用の観察器での実践記録

ある企業の協力でお借りした機器を使用しています。シリンジにランタンのマントルを入れて、観察器側面から押し込むようにすると、飛跡が拡散していくように広がっていきました。一定時間その効果が持続するようです。

「動 画」研修会での実践:少し古い映像ですが震災直後にアクセスが集中したものです。

「解 説」

1.ウィルソンの霧箱の改良版:放射線の軌跡を視覚で実感する実験です。放射線が空気を通過すると、空気を構成する原子(窒素や酸素)に当たり、その中の電子がはじき飛ばされ、陽イオンが生成します。過飽和状態の水蒸気中でこの放射線の電離作用が起こると、生成した陽イオンが凝結核となり、周囲にある水が集まって水滴が生じるというもの。放射線の道筋に沿って霧が発生するので、まるで飛行機雲のような形で飛跡が観察されるわけです。これは、ラングスドルフ拡散型霧箱ですが、もともとはスコットランドの 物理学者ウィルソンの霧箱の原理として知られています。ウィルソンは、過飽和状態での霧の発生の研究を通じて、凝結核となる塵やゴミを除いても、霧のような飛跡が生じることに着目しました。彼は、空気中に生じたイオンが凝結核となっていると考え、それが放射線の電離作用によるものであるということを明らかにし、1927年のノーベル物理学賞を得ています。

2.放射線源はマントル:軌跡の観察には、容器内部にエタノール(水より揮発しやすい)の過飽和状態を作ることが必要です。ドライアイスで容器下部を強烈に冷却し、エタノール蒸気が過飽和になる状況を保ちます。また、実験ではキャンプ用ランタマントルには、放射性物質(トリウム)が含まれており、石油に湿らせた繊維が燃焼する際に、より輝きを増す効果があります。ただし、放射線とはいっても、実験で扱うマントルの放射線量はごくわずかなので安心です。なお、放射線は荷電粒子で磁場の中では飛跡が曲げられるので、磁石を用いて放射線に関する学習を深めることもできます。放射線の種類は、飛跡の長さや形を比較することで放射線の大まかな区別ができるとも。α線は、太くて長めであるが、β線はちぢれて短めだそうです。


◇材 料


◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。


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