• 教材や実験の開発情報

山田暢司 担当の自然科学総合演習はすべて終了しました。(以下、記録)

実験映像コンテンツ開発(VCP班)

□班の名称「VCP」

Visual Contents Production-(group)  → VCP

□参考資料 PDFダウンロード → 

自然科学総合演習2022_映像コンテンツ開発_活動案内_山田

□実験映像コンテンツの開発』テーマ設定の理由:理科教育におけるICT機器の進展は目覚ましく、活用環境は急速に整備されつつあります。しかし、教育課程との整合の遅れや、教材コンテンツそのものの開発は順調とは言えません。そこで、今後の活用ニーズの増大に応える有用映像コンテンツの開発に取り組むことにしました。一昨年度からVCP(Visual Contents Production)グループとして、継続的に取り組んでいます。

内容取り組み分野例

  1. 取り扱いに注意を要する教材:「模擬火山」「粉塵爆発」 → マイクロスケール化検討?
  2. 映像として魅力的な教材:「トラウベの壺_金属イオンと浸透圧_タイムラプス機能を用いて」「酵素の働き_生もの(野菜や果物)を用いて」「話題のメントスコーラとは?_スロー撮影での工夫」「ガウス加速器とは?」「蜃気楼の仕組み」
  3. 操作方法のガイドを重視した教材(youtubeやインスタでのライブ実践向けコンテンツ):「LEDを用いた電子回路工作_太陽光を用いて」「立体万華鏡を作る」

その他

  • 活動場所:理科教育研究室(S2の奥の小部屋)
  • 受講にあたって
    • スマホやPCを用いてのデジタル編集スキルがあることが望ましい。
    • 実験操作や教材開発への意欲が高く、事前に取り組みたいテーマを持っていることが望ましい。
    • youtubeやインスタでのライブ実践に柔軟に取り組めることが望ましい。

□スケジュール:予定

①9/29:オリエンテーション

②10/6:テーマ検討・取り組みの確認・各自情報収集

③10/13:実践

④10/20:実践

⑤11/3:卒業研究中間発表会(1)

⑥11/10:卒業研究中間発表会(2)

⑦11/17:卒業研究中間発表会(3)

⑧11/24:卒業研究中間発表会(4)

⑨12/1:実践

⑩12/8:実践

⑪12/15:実践

⑫12/22:実践

⑬ 1/12:発表シュミレーション スピーチのチェック

⑭1/19:成果発表(1)

⑮ 1/26:成果発表(2)


以下、これまでの実践記録…VCP2019~21

<1.魅力的な科学実験>

PETボトルに金メッキ ~ ゴージャスなペットボトルに大変身!

「実験概要」PETボトルの内面に、有機化合物などを用いて引っ掛かりを作ることで金メッキをくっつきやすくしています。

「動 画」 

「観 察」複雑な工程を踏みますが、振っていくだけでペットボトルに金メッキがついていくのが観察できます。完成品はとても金ピカで綺麗です。青い透過光も観察でき、普段見ることのできないとてもゴージャスなペットボトルを見ることができました。

「解 説」アスコルビン酸の還元性を利用しています。塩化金酸を用いていますが、これが水に可溶し黄色のテトラクロリド金(Ⅲ)酸イオン[AuCl₄]⁻を生じます。このイオン中の金(+Ⅲ)原子が、アスコルビン酸(ビタミンC)によって還元されます。(メカニズムが複雑なため、金イオンの還元反応のみ示します。)

 Au³ + 3e⁻ → Au

 金は、安定した元素ですが、プラスチック面が静電気的な偏りが小さいので金属との親和性が低くなっています。そこで、一旦フミン酸のような有機化合物を塗布し、さらに有機化合物と金属の両方に親和性を持つスズSnを付着させておきます。引っ掛かりあ(アンカー)のような役割を持たせることで、プラスチック面への金メッキが容易にすることができるわけです。

◇水素爆発 ~ 水素爆発ロケットをスロー再生で!

「動 画」

「実験概要」水素を入れたペットボトルや紙製の筒にストローを挿して火をつけると、最初は小さな炎が見えるだけですが、突然爆発的な反応が起こります。水素爆発という現象で、スローモーションで撮影すると爆発する美しい瞬間を撮影することができます。

「観 察」水素爆発の瞬間をスローで撮影し、爆発の瞬間とともに炎の美しいゆらぎもはっきりと見ることができました。ローアングルからの撮影で、飛行中の菓子筒ロケット内部の様子も確認することができました。

「解 説」ペットボトルの下から入れた水素は空気よりも軽いためペットボトルの上部、ストローに集まります。指を離して点火すると、水素濃度が高いうちは、ゆっくりと燃焼します。しかし、ペットボトルの下から酸素が入り込んで、水素の濃度が4%〜75%、酸素濃度が5%以上に達する(水素の爆発範囲)と爆発が起こります。化学反応式は…

2H2 + O2 → 2H2O

<2.キッチンサイエンス>

卵の殻を酸で溶かす_プヨプヨ卵を作ろう

「実験概要」卵を酢に漬けておくことで、殻が酢の酸により溶け中身が透けて見えるような卵になります。また、プヨプヨしているためボールのような感触を味わうこともできます。殻のみのほうは卵の膜だけが残るため、膨らませて風船のように扱うこともができます。

「動 画」

「観 察」卵の殻がすっかり溶け去って膜だけになり、中の黄身が透き通って見え、動かしてみると黄身の動きもわかります。また、卵が元の卵の大きさより大きくなっていることも観察できます。殻のみの方は膜だけが残り膨らませるなどなどして紙風船と同じように遊ぶ事ができました。

「解 説」卵の殻の主成分は炭酸カルシウムで約95 %を占めるとされています。たまごの表面は粗く、これはクチクラという薄い膜で覆われています。酸が反応すると次のように二酸化炭素が遊離して、気泡を観察することができます。

CaCO3 + 2H → Ca2+ H2O + CO2

卵の殻は薄く、酢に3日漬けておくと殻を溶かすことができます。酢酸分子は4つの水素を持っていますが、反応するのは一つのみなので1価の酸です。水溶液中では、次のように電離し、0.1 mol/L の場合は電離度α=0.016で、1000分子中わずかに16分子しか電離しない弱酸です。

CH3COOH → CH3COO + H

酢に漬けた卵が元の卵より大きくなったのは、浸透圧によるものです。浸透圧とは濃度の異なる2つの液体は、半透膜を通して、水が濃度の高い方に移動します。この時の圧力の差を「浸透圧」といいます。この実験では、半透膜を通じて浸透圧の高い卵内部に向かって水が移動することで、卵が膨らんだと考えられます。

<3.安全教育>

「エタノールの継ぎ足しによる引火 ~ 安全に実験を行うために〜」

「実験概要」安全教育としてエタノールの継ぎ足しをした時の危険性についての実験を行いました。

「動 画」

「観 察」少量のエタノールでも操作中でのつぎ足しによって、高く炎が燃え上がる様子が観察できました。高く燃え上がっている火でも濡れ雑巾で被せると鎮火でき、落ち着いて行動することが大切であることもわかりました。

「解 説」エタノールは可燃性で、常温でも蒸気に引火すると容易に燃え上がりやすい物質です。燃焼の際の化学反応式は…C2H5OH + 3O2 → 3H2O + 2CO2 

このような性質を踏まえ、エタノールのように引火性のある物質は火がある場所に近づけないことが大切です。また、操作中でのエタノールの継ぎ足しは危険性が高く、事故につながりやすいので行ってはなりません。なお、引火によって火が燃え上がってしまっても対処できるように、手元に濡れ雑巾等の用意をしておくことも肝要です。

◇塩素の性質_塩素の発生操作と注意点

「実験概要」塩素は教科書でも良く扱われますが、取り扱いに注意を要する物質です。特に、人体に有害であるため、その発生の様子や性質について動画を収録してみました。実験のだいたいとしての教材活用を目指すものです。

「動 画」

「観 察」塩素は空気より重く黄緑色の気体であることは観察できましたが、発生量は少なく抑えたつもりでもかなりの刺激臭がありました。また、塩素の酸化力により色水の色が脱色されました。なお、同じマーカーの種類でも、ピンクや緑に比べ青色や黄色の方が消えやすいこともわかりました。

「解 説」さらし粉と塩酸を混ぜることで塩素が気体となって発生します。反応式は…

CaCl ( ClO )・H2O + 2HCl → CaCl2 + 2H2O + Cl2

常温で気体、分子量約71であるため、下方置換により収集しますが、十分な換気が必要です。


<2020年度記録>

1.アンモニア噴水~水酸化ナトリウム法:操作上の工夫【細池】 アンモニア噴水

通常は加熱や乾燥作業を行い、装置も大きいといった手間がかかる実験であった。操作を簡素化し、安全かつ確実な効果を得られるよう工夫した。

 [反応式]  NH4Cl + NaOH → NaCl + NH3↑ + H₂O

2.硫黄の三態:操作難度の高い定番実験【松浦】 硫黄の三態

使用する硫黄の量や加熱具合を操作中に加減することが必要。操作は後戻りできないことや、硫黄粉末が燃えて有毒なガスの発生を伴うなど、映像コンテンツで実験操作のポイントを押さえることができるよう工夫した。

3.綿火薬ニトロセルロースの合成と燃焼:取扱いに注意を要する実験①【増田】  綿火薬 

興味本位で実施されることがある実験であるが、かなり危険を伴うものであることを認識させる。きちんと基本を学べば、優れた教材になり得ることも訴えた。

4.三ヨウ化窒素の合成と分解:取扱に注意を要する実験②【丸橋】 三ヨウ化窒素 

取扱いに注意する実験であるため、安全対策と適切な処理を行う必要があり、学校などでは行われていない実験を行った。

[反応式] NH₃+3I₂  → NI₃+3HI…①

2NI₃ → N₂ + 3I₂…②

5.煙玉をつくる:魅力的な教材①【反田】 煙玉の実演 

身近にあるピンポン玉を用いて煙玉をつくる。操作手順を確実にマスターすれば安全かつ楽しい教材となり得る。

6.一酸化窒素の生成と捕集:魅力的な教材②【川路】 一酸化窒素の生成

化学では受験でも定番の内容だが、視覚的にイメージしにくく、実験として扱われることは少ない。発生~捕集の操作方法を紹介。

[反応式] 2NO + O₂ → 2NO₂ …①

3Cu + 8HNO₃ → 3Cu(NO₃)₂ + 4H₂O + 2NO↑…②

2NO₂ + H₂O → HNO₃ + HNO₂ …③