乾電池を用いて安全簡単に金メッキを行うことができます。
ちょっとこまやかな操作は必要ですが、簡単に金メッキをすることができました。
「解 説」
ヨウ素I2 は、次のようにヨウ化カリウムに溶解し、三ヨウ化物イオンI3– となっています。
I2 + I– ⇄ I3–…①
この三ヨウ化物イオンI3–は、金と反応して錯イオン[AuI2]–を形成します。
2Au + I3– + I– → 2[AuI2]– …②
しかし、この錯イオンは不安定で、すぐに[AuI4]–(テトラヨージド金(Ⅲ)錯体)となってしまいます。
[AuI2]– + I2 → [AuI4]– …③
そこに、還元性を持つアスコルビン酸を加えると、錯イオン中の金(+Ⅲ)イオンが単体の金となって還元されるのです。
Au3+ + 3e– → Au …④
2.電析によって還元
還元された金原子は、ただちに単体金として析出せず、ある一定の大きさの粒子を保ち、水溶液中に金コロイド粒子として分散していると考えられます。金コロイドの表面は正に帯電していますが、過剰のアスコルビン酸が金粒子表面に吸着され、比較的安定して存在することができるのです。ただし、静電気的に安定しているだけで、そこに電圧をかけると、金粒子は陰極に向かい、陰極金属表面に強固に張りつくものと考えられます。なお、実験後の廃液がやや紫色となっていることが観察されることがあります。これは、金コロイドの存在を示すもので、その大きさが数十nm程度の場合の色です。また、一般的な、レーザー光によるチンダル現象の観察も可能となっています。
3.簡素な金メッキ
金は、イオン化列の最右に位置し、最も酸化されにくい金属として知られ、教科書等では例外的に王水(濃塩酸:濃硝酸)だけには溶解するかのように扱われています。化学反応式も紹介され、塩化錯イオンの形成まで扱われてはいます。しかし、同じハロゲンであるヨウ化錯イオンはほとんど取り上げられることはないようです。取り扱いが難しい王水よりも、はるかに安全簡単に操作可能な本方法は、もっと注目されてもよいと思います。
◇参考:高木春光,関登,化学と教育 2002,50,698.
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、解説の一部を非公開にしてあります。操作には一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。