銅板のエッチング:銅板に文字や絵の形を残す工芸的な実験です。工芸の世界では、物理的に力を加えて加工することもあるのですが、ここでは化学反応(酸化還元)用いて銅板に文字や絵を刻む実験工作です。
銅板を塩化鉄(Ⅲ)水溶液に浸すと、銅が溶出します。銅は酸化されて銅(Ⅱ)イオンとなり、鉄(Ⅲ)イオンは鉄(Ⅱ)に還元されます。それぞれの金属について標準酸化電位は…
Cu2+ + 2e– → Cu … + 0.34 V _①
Fe3+ + e– → Fe2+ … + 0.77 V _②
なので、②が①より正であるため…
Cu + Fe3+ → Cu2+ + Fe2+ … + 0.43 V の反応が優先的に起こります。
銅板は、塩化鉄(Ⅲ)水溶液中のFe3+の酸化を受けて溶け出しますが、油性ペンで保護された部分は、文字や絵として残るのです。反応後、銅イオン(青色)が溶出するため、濃黄色水溶液は黄緑色に変化します。エッチングとして残った文字や絵の部分を手でなぞると、その部分が少し浮き出ている感じがするので、背景となる銅板が溶出したことが理解できます。
マジックインキは、アセトンだときれいに落ちますが、紙や布でもふき取ることはできます。なお、日を追って、銅が溶出した部分が酸化して微妙なくすみを醸し出すことがあります。それが良い感じの印影となって雰囲気のある文字プレートが出来ます。
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものがありますので参考になさってください。