氷に食塩を加えて温度を一気に下げ、その効果でアイスクリームを作ってしまおうとする試みです。
□生クリーム、バニラビーンズ、卵、牛乳を使い、口当たりもフカフカした本格味のアイスが15分ほどで出来上がります。
「準備」「操作」WEB非公開
「解 説」
状態変化による熱吸収:氷が水に状態変化する際には、融解熱という一定のエネルギーが必要となり、周囲からその熱を吸収します。変化をイメージでとらえると…
氷(固体) + 熱 → 水(液体)
また、この熱の出入りを熱化学方程式として教科書的に表現すると…
H2O(固) = H2O(液) – 6 kJ
この熱化学方程式は、1モルの水(固体)が融解して、水(液体)になる際に吸熱が起こることを示すと同時に、水が凍って氷になる際に放出される凝固熱と同値になります。
結晶溶解による熱吸収:この水の状態変化による融解に、塩化ナトリウムが加わることで状況は複雑になります。氷解によって生じたわずかな水に塩化ナトリウムが溶け込むことで、溶解熱という熱吸収が起こるのです。
NaCl + aq = NaClaq – 3.88 kJ
水に塩化ナトリウムの成分(ナトリウムイオン Na+ と塩化物イオン Cl– )が溶解していくことで、純水の場合なら0℃で融解するはずが、やや低い温度で溶液の状態を保つことができる凝固点降下という現象が起こります。 Na+ や Cl–が水の中を自由に動き回ることによる効果と考えられます。それらイオンの濃度が高ければそれだけ凝固点降下の影響が大きくなりますから、塩化ナトリウムの溶解が進めば、さらに凝固点降下が進んでいきます。氷と塩化ナトリウムの割合を約3:1にして混合すると、理論的には-21.2℃まで低下させることができます。簡易的な寒剤としても利用価値のあるものです。
2.アイスクリーム:氷と塩化ナトリウムを用いた寒剤によって、アイスクリームを作ろうとする試みを紹介しています。ただし、ただ単に材料を強烈に冷却するだけでは、あの絶妙なフカフカ感のアイスクリームにはなりません。必要な材料を急冷すると氷晶ができ始めますが、同時に脂肪やたんぱく質、その他の添加物の粘度が高まってきます。そのタイミングで激しくかき混ぜを行うことで、各成分の層の間に適度な空気が気泡となって送り込みます。さらに、急冷によって成長し過ぎた氷晶を適度に破壊してカチカチに固まらないようにするのです。実験では、ペットボトルを利用する場合もありますが、動画のようにキャップねじ込み式のアルミ缶を用いる方が、寒剤の効果が伝わりやすいようです。ただし、取り出し時には缶を切断しなければならないので注意が必要です。
◇実験タイトル:寒剤でアイスを作る
◇サブタイトル:ナイスなアイス!
◇キーワード:寒剤 溶解度 凝固点降下
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。