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金箔をヨウ素液や王水で溶かしたり、ガスバーナーの炎を用いることで、金コロイド粒子とすることができます。水溶液中に分散する粒子の大きさは、約10 nm程度で、粒子が小さいと赤が強くなり、大きくなると赤紫~青が強くなります。金コロイドを作成する方法を3つ紹介します。


「動 画」方法1:ヨウ素液を用いる(王水不使用) 

□金箔にヨウ素液を滴下して金を溶かす方法:王水(濃塩酸:濃硝酸)を用いない安全・簡便な方法です。ヨウ素液はI2 をヨウ化カリウムに溶解させたもので、単体のヨウ素 I2 は三ヨウ化イオン  I3 となります。

I2 + I ⇄ I3

金は I3と反応し、いったん錯イオン [AuI2]となって溶解しますが、すぐに[AuI4](テトラヨージド金(Ⅲ)錯体)となって安定します。

2Au + I3 + I ⇄ 2[AuI2]

[AuI2] + I2 ⇄ [AuI4]

そこに、アスコルビン酸を加えると、錯イオンとなっていた金(Ⅲ)イオンが還元さます。その際、金原子は、ある一定の大きさの粒子となって水溶液中に分散し、一定の大きさを保ったコロイド粒子が形成されるというものです。この方法では、赤紫色を呈することが多く(色は粒子の大きさによる)、コロイドとしても比較的小さな粒子となっていると考えられます。


「動 画」方法2:王水に溶かして有機酸で還元

金箔に王水(濃塩酸:濃硝酸)を滴下していくと数分で黄色いテトラクロロ金(Ⅲ)酸水溶液となります。希釈して加熱後、アスコルビン酸やクエン酸などの還元性有機酸によって金イオンが還元されて単体金に。その際に一定の大きさを保ったコロイド粒子が形成されるというものです。コロイド溶液の色は、粒子の形成状況によって微妙に異なり、簡素な実験操作では、黒~青紫~赤紫と幅があるようです。

最もオーソドックスな方法で、金を溶解させる王水(濃塩酸:濃硝酸)を扱うので、教科書の項目でも関心を持たれることが多いようです。ただし、強烈は酸の混合物を用いるので、その取扱いには注意を要します。特に、十分な喚起を行い、周辺に精密機器等を置かないよう注意してください。なお、王水を用いて金を溶解させる場合の反応式としては…

HNO3 + 3HCl → NOCl↑ + Cl2↑ + 2H2O

Au + HNO3 + 4HCl ⇄ [AuCl4] + NO + H+ + 3H2O

「動 画」王水についての解説動画

□最後の式は省略しています

「動 画」方法3:鮫島の方法

□鮫島の方法:金箔を王水に溶解させて、ガスバーナーの還元炎でコロイド粒子を作成するというものです。王水中でテトラクロリド金(Ⅲ)イオンとなっていたところに、一酸化炭素COによって還元された金が生成するのです。これは、簡単な方法で、きれいな赤紫色透明がつくりやすいのでおススメです。


◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。




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