化学基礎実験_実験NOTE
「欠席者用:参考資料」
No.8
「表 題」ダニエル電池の作製と電池性能の測定
「目 的」亜鉛-銅によりダニエル電池を作成し、放電による変化を観察する。また、外部端子抵抗による内部抵抗の測定を試みる。
「概 説」
- ダニエル電池の金属板付近では、亜鉛が電子を放出し亜鉛イオンとなり、銅イオンは電子を受け取って単体の銅に還元される。
Zn → Zu2+ + [ 2e– ] …①
Cu2+ + 2e– → [ Cu ] …②
電子e–を消去するために①+②としてまとめると…
Zn + [ Cu2+ ]→ [ Zu2+] + Cu
Zn2+ + 2e– = Zn – 0.762V_EZn
Cu2+ + 2e– = Cu + 0.340V_ECu
酸化電位E = ECu – EZn より、
Cu2+ + Zn = Cu + Zn2+ + 1.102V
この酸化電位 + 1.102 Vが、ダニエル電池の理論起電力になる。電池式は、電解液を組み合わせて次の表記になる。
([-])Zn|[Zn2+]・ZnSO4|CuSO4・[Cu2+]|Cu([+])
- 電池性能の低下:化学電池は放電の進行によって[ 電圧 ]降下が起こりやすくなる。主な要因としては、
- 活物質濃度低下:反応に関わる化学物質の[ 濃度 ]が低下する。特に電極付近で激しく起こることによる。
- イオン伝導度の低下:電解質内を移動するイオンの[ 速度 ]が低下する。電解質膜の劣化もイオン伝導度の低下をもたらす。
- 電極活性の低下:金属板表面の[ 触媒 ]機能が低下することによる。
- 電池性能の測定:最も簡便な方法が電池の[ 内部 ]抵抗を測定することである。内部抵抗rは、開放電圧Eの電池に抵抗Rをつないで実際に電流を流した時にかかる電圧降下の割合で、V = E – rI で表すことができる。また、抵抗にかかる端子電圧はオームの法則 V = RIにより求まる。
V = E – rI V = RI
電流Iを消去すると内部抵抗rは
r = R[(E/V)-1]
この内部抵抗rは、電池性能を判断するバロメータとなる。
- 回路に流れた電気量:金属板の質量の変化から、移動した電子の量がわかる。1molの物質量に相当する電子の電気量は、約96485〔C〕とわかっている(ファラデー定数)ので、おおよその電気量を算出することはできる。移動した電子の量をn〔mol〕とおくと、
電気量:Q = n(電子の量)×96485〔C〕
しかも、電気量Q は、電流I〔A〕が流れ続けた時間t〔s〕の積でも表現されるので、
電力量:Q = [ It ]〔C〕
したがって、電気を流していた時間がわかれば、平均的に流れていた電流値も算出可能である。
「準 備」
精密電子天秤 銅板 亜鉛板 ろ紙2枚1mLピペット2本 0.1mol/L硫酸亜鉛水溶液5mL セロファン紙(半透膜) 1.0mol/L硫酸銅水溶液5mL ペーパータオル バット リード線2組 モーター(電子オルゴール) ガムテープ テスター 抵抗(5~100Ωなど) アセトン10mL
「操 作」
- 1mol/L硫酸亜鉛水溶液、1.0mol/L硫酸銅水溶液をそれぞれ約3 mL試験管に準備しておく。
- 次のものを下方より順に上に積み重ねて電池セルを作成する。
- 亜鉛板
- ろ紙B(1mLピペットで1mol/L硫酸亜鉛水溶液で十分に湿らせておく)
- セロファン紙(半透膜)
- ろ紙A(1mLピペットで0mol/L硫酸銅水溶液で十分に湿らせておく)
- 銅板
- ペーパータオル
- 銅板と亜鉛板の折り曲げ部分に、リード線のワニ口クリップを接続し、モーター(低電圧で作動するソーラー用または電子オルゴール)を組み入れる。モータ等は安定させるためガムテープなどで固定しておく。
- 内部抵抗測定
- ソーラーモーター等を外し、開放電圧Eを測定する。
- そこに端子抵抗Rをつなぎ、その直後に降下した電圧Vを測定する。
「工夫と注意・片付けなど」
- リード線やモータは濡らさないように。
- ろ紙は破棄、金属板洗浄して返却。
「観察・結果」
- 作製した電池セルにモーターを組み入れた全体図
- 長時間放電終了後、電池を解体時の各金属板やろ紙の変化の観察
・[黒 ]化:亜鉛が溶出して表面が[ 粗 ]くなる
・[褐 ]色物質が付着してくる。
・青色 → [薄 ]くなる
開放電圧E → [ ]
端子抵抗R・降下電圧V → [ ]
「考 察」
- 電池概略図を描き、放電終了後の観察からわかることを考察しなさい。(電子やイオン移動など)
- 計測値から内部抵抗を計算し、内部抵抗の要因について考察しなさい。