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ガラス管の一方からアンモニア分子、もう一方から塩化水素分子がお互いに向かって突き進んでいって出会うと塩化アンモニウムが生成します。塩化アンモニウムの結晶は、白煙のリングとなって観察されるというものです。

「動 画」

□白煙のリングはやや塩化水素側で発生します。うねうねと動き続け、いかにも化学反応が起こっている感が観察されます。

「操 作」(WEB簡略版)

  1. 濃アンモニア水を数滴脱脂綿に滴下する。
  2. 濃塩酸を数滴脱脂綿に滴下する。
  3. 太いガラス管の両端に、濃アンモニア・濃塩酸の脱脂綿をそれぞれピンセットを用いて軽く押し込む。
  4. ガラス管内部を観察する。

「解 説」

揮発性の物質:アンモニア臭がきつく感じられるのは、それだけアンモニア水からのアンモニア分子の揮発が激しいことを示しています。また、塩化水素も同様で、濃塩酸のボトルを開けた途端に揮発してきた塩化水素が拡散してきます。どちらの試薬も、実験室で扱う際には十分な換気を確保しなければならない物質となっています。

気体分子の熱運動:物質が揮発するということは熱運動の結果で、空気中を拡散していく速度は、一般に分子量の平方根の逆数に比例します。アンモニア分子・塩化水素の分子量をそれぞれ17、36.5とすれば、1/√17 = 1/4.12…≒0.243、1/√36.5 = 1/6.04 ≒ 0.166なので、拡散速度の比はおおよそ3:2くらいとなります。動画でも、塩化水素側のだいたいそのあたりに白煙のリングが発生していることが観察されます。なお、軽い分子ほど拡散速度は大きい傾向はありますが、拡散媒体(気体)や分子の極性など他の要因もあることには留意します。

◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、解説の一部を非公開にしてあります。操作には一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。

◇著書(単著):『サクッと!化学実験(dZERO)』『高校教師が教える化学実験室』『実験マニア(亜紀書房)


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