• 教材や実験の開発情報

ヒイラギモクセイを水酸化ナトリウムで処理し、葉脈部分を取り出します。スマホレンズ程度でもかなり拡大した画像が得られます。

「動 画」取り出した葉脈を着色しスマホレンズで観察

「動 画」授業での実践記録

「動 画」アルカリで煮た後の流水での処理。


実験プリント版

「理教法_補充実験」2019.5.14

「表 題」葉脈を取り出す

「目 的」強塩基を用いて、葉脈の道管部を取り出す。

「実験理論」

アルカリで植物組織を溶かす:水酸化ナトリウム水溶液は強い塩基性を示し、植物組織の一部を軟らかくしたり溶かしたりする働きがあります。ミカンの皮剥きや野菜のあく抜きなどに、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリを使用する場合の原理と同様です。木の葉の大部分である葉肉を構成する成分のうち、細胞膜部分のタンパク質とリン脂質は加水分解されて溶け出し、細胞どうしをつなげて安定させるペクチン質も分子内のカルボキシル基との酸塩基反応により水に溶解しやすくなります。一方、葉脈(筋の部分)は、アルカリに溶けないセルロースやリグニンが堅固に結びついた安定した構造を保っている(木化)ので、葉肉が溶け去った後に、骨組みのような筋だけが残るのです。水酸化ナトリウムは、水に溶解して強い塩基性を示し(NaOH→Na++OH)、タンパク質を加水分解します。

[HN-□-CO]n+ NaOH → n[H2N-□-COO-Na+]

(□:様々な分子骨格部の省略形)

自然の造形美「葉脈」:材料のヒイラギモクセイの葉は、特にしっかりとした葉脈を持ち、その構造を観察するのに適した教材です。葉脈は、細胞に必要な水や養分を供給したり、生産された光合成産物を送り出す役割を持ち、動物でいえば、血管に似た機能を持っています。また、葉を水平に広げて支える強固な構造は、光合成の効率を高めるのに都合が良いのです。葉脈は、茎とつながる葉柄の部分から始まり、葉の端に向かって細かく枝分かれして網状となります。ルーペで観察すると、全体の構造と個々の小さな部分が自己相似形を繰り返す、いわゆるフラクタル構造をしていることがわかります。生物が生命活動をする上で、有効な構造をとっている結果なのだろうが、自然の造形美を楽しむことができる教材です。学校や科学イベントで、生葉から葉脈をつくり、透明シートに封入するという「葉っぱのしおり工作」として紹介されることが多く、低年齢層向けの実験として大変人気があります。しかし、水酸化ナトリウムは劇薬であり、加熱して使用するので、その扱いには十分に注意する必要があります。

「準 備」500mLビーカー 25g水酸化ナトリウム ヒイラギモクセイなど肉厚種の木の葉10枚程度 沸騰石2粒 温度計 ピンセット トレイ 歯ブラシ フェノールフタレイン溶液 作業用紙 着色剤(絵具など) パウチ ハサミ 顕微鏡 保護メガネ 使い捨て用の手袋

「操 作」2-3人グループ想定

  1. 10%水酸化ナトリウム水溶液の調製:500mLビーカーに、25g水酸化ナトリウムを入れ、水を加え250mLとする。
  2. ヒイラギモクセイなど肉厚種の木の葉(人数×3枚程度)を10枚程度加え、加熱して約20分間80℃に保つ。沸騰石2粒も追加しておく。
  3. ピンセットで木の葉1枚をトレイに取り出して流水にさらし、水酸化ナトリウムを流し去る。歯ブラシを用いて、葉肉を容易に取り除くことができるかを確認する。→できない場合は、さらに加熱を継続する。
  4. ピンセットで木の葉すべてをトレイに出し、流水に十分さらし、水酸化ナトリウムを流し去る。 → フェノールフタレイン溶液でチェックすると良い。
  5. トレイ(各自)上で歯ブラシ(各自)を用いて葉肉を取り除く。水に浸しながら細かくたたくようにすると良い。
  6. 水で洗いなおし、紙などで水分を取る。
  7. スマホ等で拡大して観察する。→そのサンプルは提出する
  8. 残ったサンプルは、紙上で着色し、パウチして封入、ハサミ等で加工し、栞(しおり)などにすると良い。

「注 意」

  • 水酸化ナトリウム水溶液の加熱時は、保護メガネ着用必須、ゴムまたは使い捨て用の手袋使用が望ましい。
  • 水酸化ナトリウム水溶液は沸騰させないこと。
  • 歯ブラシでたたく際、破れやすいので強くたたき過ぎないこと。
  • 水酸化ナトリウム廃液は指定容器に廃棄すること。

「観察」

  1. 操作の記録:ポイント・工夫点など
  2. 葉脈の観察記録
  1. 教材研究

⑴教育課程上の位置づけ・指導項目

⑵指導上の留意点


◇山田暢司,化学実験室(工学社I/OBOOKS),p170

◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものがありますので参考になさってください。

  


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