エタノールで浸したハンカチに火をつけても燃えにくいことがあります。ハンカチ表面でのエタノールと水の蒸発熱の効果が関与しているようです。
「動 画」理科教育法での演示実験
□ハンカチを揺らしてエタノール蒸発を促しています。
「解 説」
発熱反応と吸熱反応が同時に起こる:発熱反応と吸熱反応を熱化学方程式を使って同時に学習させることができます。エタノールの燃焼熱は1368〔kJ/mol〕で、酸化燃焼により発生する熱量が他のエタノール分子の燃焼を助けます。しかし、液体のエタノールが蒸発する際には、38.6〔kJ/mol〕もの蒸発熱が奪われ、消毒用エタノールに含まれる水の蒸発熱の影響も無視できません。ハンカチ表面の温度は低く抑えられるわけです。関連する反応のそれぞれの熱化学方程式は…
エタノールの燃焼:CH3CH2OH + 3O2 = 2CO2 + 3H2O(液)+ 1368kJ
エタノールの蒸発:CH3CH2OH(液) = CH3CH2OH(気) – 38.6kJ
水の蒸発 :H2O(液) = H2O(気) – 41kJ
燃えているのはエタノール:石油ストーブに点火する際、芯に火を近づけると芯自体ではなく、芯の付近から炎が燃え上がっていることが観察できます。もちろん芯そのものは燃えにくい素材でできていることもありますが、燃えているのは燃料であって芯ではないです。芯に供給されている燃料は、蒸発しながら燃焼を継続しているので、芯部分の表面の温度はその燃料の蒸発温度(沸点)に近い状態を維持しています。また、燃焼による気体の対流が起こり、燃焼に影響を与えています。さらに、実験のハンカチの例では、消毒用エタノールに含まれる水分が影響して、燃料の燃焼が終結しやすく、ハンカチ自体が燃えないことがあるのです。もちろん、濃度の高いエタノールを使用すれば、ハンカチは容易に燃え尽きてしまいます。
◇実験タイトル:燃えないハンカチ
◇サブテーマ:燃えぬ木綿のハンカチーフ
◇キーワード: 熱化学方程式 燃焼熱 蒸発熱
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、解説の一部を非公開にしてあります。操作には一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。