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紅花(ベニバナ)から紅色素(カルタミン)を炭酸カリウムによりアルカリ塩として抽出します。その後、クエン酸で中和し、弱酸である紅色素の遊離によって、繊維への固着が起こります。

◇ハンカチ程度の布であれば、比較的容易に染め上げることができます。ただし、堅牢度が低く、染め布を塩基性溶液に触れさせると色落ちしてしまいます。

◇世界最古の染色法とも言われ、日本古来の伝統染色においても特筆すべき存在ともなっています。二種類の色素が含まれていて、それぞれ染色の作業も染色作品の出来映えも異なるところも魅力的です。

「動 画」授業実践記録


「解 説」

1.  水に難溶性のフェノールをアルカリ塩として抽出する:ベニバナには主に二種類の色素が含まれ、水溶液の黄色色素(※サフロールイエロー:Safflower Yellow)を溶かし去った後に残る赤系色素がカルタミン(カーサミン)です。紅色素カルタミンは、水に溶けにくいのですが、分子内にフェノール性ヒドロキシ基を含む共役系構造をたくさん持っている(ポリフェノールの一種)ので、炭酸カリウム水溶液を加えると、カリウム塩を形成し、水溶液に溶出してくるのです。いったん、色素を水溶性にして十分に抽出するわけです。

□-OH + K ⇄ □-OK + H …①

フェノール   フェノキシド

(水に難溶)    (水溶性)   ※右方向への反応が進行

なお、このフェノシキドの際の水溶液は、暗褐色を呈しています。

※操作の始めの段階で分離した黄色い色素:サフラワーイエロー:

2.  酸の遊離を利用して繊維への固着をはかる:そこに、カルタミン(フェノール類)よりも酸性の強いクエン酸が加わると、水素イオンHが増大し、反応は左へ進行、元の難溶性の色素にもどる。 → 弱酸であるカルタミンが遊離してくることになります。カルタミンは、水溶液には溶けていられなくなるため、水に不溶の木綿(セルロース)に引き寄せられ、繊維層に固着し、酸性下での鮮やかな紅色を呈するのです。また、クエン酸添加の際の発泡ですが、これは二酸化炭素の遊離によるものです。

炭酸カリウムは水溶液中で電離し、形式的には次のように記述できます。

K2CO3 → 2K+ + CO32-

しかし、CO32-は、加水分解され

CO32- + H2O → HCO3 + OH-  となって、水溶液はアルカリ性となっています。

そこにクエン酸が加わると中和反応が起こり、二酸化炭素の発泡が見られるのです。

H+ + HCO3 → H2CO3 → H2O + CO2

実際には、まず炭酸カリウムがこの反応によって中和され、その結果、ポリフェノールであるカルタミンが遊離してきたと考えます。なので、二酸化炭素の発泡が停止するということは、色素遊離も完了したのとみなせるのです。

2.  最古級の繊維染色技術:日本の伝統工芸おいて特筆すべき技術の紅花(ベニバナ)染め。材料である紅花は中東原産で、古くはエジプト第六王朝時代の碑文にその記述があり、繊維染色としては最古級です。日本へは、推古天皇期(594-626年)にシルクロードを経て伝えられたとされますが、最近の考古資料によると、伝来時期はかなりさかのぼるようです。万葉時代はベニバナのことを「くれなゐ(紅)」と呼び、数首の歌に詠み込まれています。茎の先端に付いた花を摘むことから、末摘花(すえつむばな)とも呼ばれ、こちらの名の方は源氏物語でも知られています。ベニバナ色素は、古来より衣料はもちろん、化粧用の「紅」としても重宝され、その価格は金を上回る時代もあったそうです。江戸の初期には、最上ベニバナ(現在は山形県花)が、海船で酒田~敦賀へと、大津を経て京へと運ばれていました。このルートは、いわゆる「紅の道」とも呼ぶべきものですね。かの米沢藩の上杉鷹山も、ベニバナ栽培を奨励して傾きかけた米沢藩の財政立て直しに大いに貢献し、その功績は現在でも高く評価されています。

「画 像」多繊交織布:繊維の種類による色のバリエーションの豊富さがわかる

◇スタジオジブリ制作アニメ「おもひでぽろぽろ」にもベニバナ染めが登場します。参考まで。

◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものがありますので参考になさってください。


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