卵殻がきれいに溶け去った卵膜だけのぷよぷよ卵。この卵膜を真水に浸けたり砂糖水につけたりすると卵の大きさが変わるという浸透現象を観察します。
「動 画」準備中
「実験タイトル」ぷよぷよ卵で浸透圧
「サブタイトル」卵を浸けてご卵(らん)?
「学習項目」半透膜 浸透圧 透析
「準 備」卵膜だけのつるつる卵 大きめの空きビンまたはビーカー 食酢300 mL ラップ カメラ 約20 %砂糖水 デジタル計量器
「操 作」WEB非公開
「注意事項」
「解 説」
1.卵が膨らんだり縮んだり:殻を溶かし去った後には、半透明で厚さ約0.07ミリの薄い卵殻膜が残ります。この膜は、弾力のある主にタンパク質からなる緻密な繊維状構造を持っています。卵膜だけになった卵はスキンエッグとも呼ばれ、その昔マジシャンが、内容物を上手にかき出して洗浄したものを、卵を突然手に出したり隠したりという手品に使ったという記録があるそうです。真水に浸けておくと、卵がパンパンになって膨らんできますが、砂糖水に浸け直すと、始めよりも一回り小さくなってしまいます。これらは、卵殻膜と卵内部に存在する物質の粒子の大きさが関係して起こる現象です。『ナメクジに塩』『青菜に塩』ということわざにあるように、動植物の細胞膜を境にして、細胞内部の水が移動することで、細胞内の膨圧が変化するのです。
2.浸透圧:希薄溶液中に存在する粒子は、気体粒子の熱運動と同様な振る舞いをするので、溶液の状態も、気体の状態方程式に似たような方法で表現が可能です。一般に、希薄溶液中での粒子の熱運動による浸透圧(Π)は、c:モル濃度(電解質の場合はその電離している粒子数に比例)、R:気体定数、T:温度により Π=cRT
これは、ファントフォッフの式と呼ばれるものです。
ところで、細胞内には、糖類、タンパク質などの比較的大きな粒子が、熱運動をしながら存在していて、それらは比較的大きな粒子であるため細胞膜を透過できず、膜に衝突して跳ね返されてしまいます。その衝突の程度によって、細胞外の溶液の状態とに差があれば、その差を解消しようとする作用が働きます。小さなイオンや水分子などは細胞膜を通過(そのように選択的な透過現象を示す膜を半透膜と呼んでいる)する浸透現象が起こります。この浸透現象は、膜をへだてた溶液の浸透圧の差からもたされたと考えることもできます。
3.浸透圧の活用:保存を利かせるために食品を塩漬けや砂糖漬けにすることがあります。これは食品内部の浸透圧が高いため、微生物自身の水分が奪われてしまい、その繁殖が抑えられる効果を利用しています。また、身近な半透膜としてセロハンがあり、コロイド溶液の実験でも利用しますが、その原理そのものは人工透析に通じるものがあります。その他、工業的には、半透膜で純水と溶液を仕切り、溶液側に大きい圧力をかけ、溶液から純水の方に水を浸透させて淡水化を図る方法や、無菌水や超純水をつくる技術などにも応用されています。
◇山田暢司「半透膜を通して移動する水」理科教育ニュース 2010.11.18
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものがありますので参考になさってください。