タッパ式の小型燃料電池の試作品:もとは野曽原先生の「簡易燃料電池」を改良し、プラスチック板で押さえて電極間を狭く、セルロース膜を用いるなどして、内部抵抗を抑制する工夫をしました。出力も十分で教材としては上々の出来だと思います。
「動 画」授業実践・工作編:操作方法は少しバージョンアップしました
「動 画」工作編:プラスチック板に穴を空ける作業は大変なので、代わりに鉢底用の網を用いた簡素版での操作編。
「動 画」実験講習会:新潟県の記録
「動 画」完成した電池セルから装置を組み立てるところからの操作記録版
「目 的」水素-酸素(空気)形燃料電池教材の作成と内部抵抗の測定を通じ、電池反応のメカニズムと電子性能の考え方を理解する。
「実験理論」
1.反応原理:アルカリ性(OH-)の電解液のもとイオン伝導を利用している
負極:水素が電子を放出する。 (-) H2 + 2OH- → 2H2O + 2e-
正極:空気中の酸素が電子を受取る。 (+) 1/2O2 + H2O + 2e- → 2OH-
全体:生成物は水のみ H2 + 1/2O2 → H2O 水素を燃料として供給し続ければ電池として機能するので[燃料 ]電池
2.電池としての機能:燃料電池の理論電圧Vは、正極と負極のそれぞれの標準電極電位の差E =E(+) – E(-) から求まる。(-)H2 + 2OH-= 2H2O + 2e- E(-) = -0.829V
(+)1/2O2 + H2O + 2e− → 2OH− E(+) = +0.401V
理論電圧 E =E(+)–E(-)
=0.401-(-0.829)=[1.23 ]V
3.特徴:[熱 ]の発生が抑えられ、電気エネルギーへの変換効率は極めて高く、約[83 ]%にも達する。
(1)エネルギーの[制御 ]が容易で、音や振動を生じない。生成物は水のみで、[排気 ]・[冷却 ]システムも基本的に不要。装置全体の省力・[小 ]型化が容易で移動も容易。
(2)電池セルの構成がシンプルで金属電極は消耗[しない ]。金属電極自身は、化学変化せず、電極表面で起こる化学反応の速度を高めるだけの役割を果たす。特に、金属表面には金やパラジウムのような[触媒 ]が活性を高める。
(3)化石燃料の代替エネルギーとして有望。太陽光や風力、水力などのいわゆる[自然 ]エネルギーは、施設導入・維持コストが[高 ]い割に、効率が[低 ]く[不安定 ]である。
(4)課題は[触媒 ]となる貴金属、特にレアメタル(レアアース)呼ばれる高価な金属を海外からの輸入に依存していること。しかし、燃料電池は、その技術の進展によって、開発コストの低減化が急速に図られている。
「準 備」L三角フラスコ 塩化パラジウム PdCl2 130 g 濃塩酸4.6 mL タッパ(64×89×41 mm:ダイソー製) プラ製鉢底網(54×78 mm :ダイソー製)3枚 油性サインペン カッター はさみ電解質膜 セルロースチューブ(68×92 mm) 水酸化カリウムKOH 純水 200 mL三角フラスコ メモリ付きゴムボード Ni金網(200 mesh,φ=0.05 m/m:真鍋工業製) リード線 1mo塩酸100mL アスコルビン酸1 g バット 洗ビン 300 mLビーカー 単三乾電池2本 炭素棒 割りばし ビニールテープ スターラー 輪ゴム2 テスター 駒込ピペット 手袋 アルミホイル小片 外部抵抗(例えば50Ωなど) ソーラーモータ
「操 作」(一部のみ)
※2人1組作業:ニッケル電極は2個分を作成することができる。
1.パラジウムメッキ液の調製:50 mL三角フラスコに塩化パラジウム PdCl2 130 g 精秤し、濃塩酸4.6 mLを加えて栓をする。 → 換気しながら操作・塩化パラジウムが完全に溶解すると茶褐色透明溶液となるが、これには10分以上を要する。
2.タッパ容器等の準備
3.ニッケルNi金網の切り出し
メモリ付きゴムボード上にNi金網(200 mesh,φ=0.05 m/m:真鍋工業製)を置き、油性サインペンで印を付ける。長方形(50×70 mm)を4枚分、ただしそれぞれの長方形の短辺側に2 mmの引き出し線を作っておく。→実質的には各48×70 mmとなる。
Ni金網をはさみで切り出し、短編側の片方のみ、長辺側2 mmの引き出し線を切り出しておく。 → リード線接続用(図参照)
表面処理(この操作は省略可)
1mol/L塩酸100mLにアスコルビン酸1 gを溶解させバットに注いでおく。そこにニッケルNi金網を入れて数分間浸し表面処理(酸化被膜を除く)を行う。
表面処理後、バットの処理液を捨て、そのまま金網に洗ビンから純水をあてて洗い流す。さらに純水を加え、ニッケル金網をバットの純水中に置く。
4.パラジウムPdメッキ
ニッケル網を300 mLビーカー側壁に配置し、引き出し線を上方に引き上げて洗濯ばさみで留めておく。
単三乾電池2本(直列)のリード線(-)をニッケル網の引き出し線部分に、(+)は炭素棒に接続。 → 炭素棒は割りばしにテープで固定し、ビーカー上部に備え付ける。
純水約200 mLを先に注ぎ込み、スターラー上に置いて軽く作動させておく。
三角フラスコ中に溶解(完全に溶解して茶褐色透明になっていることを確認)させておいた塩化パラジウムPdCl2 塩酸溶液を注ぎ込む。フラスコ内壁も純水でよく洗い流し、メッキ浴の体積が300 mLになるまで純水を加える。
メッキ浴の水溶液の色が茶褐色からほぼ透明になるまで約10分を要する。
リード線と炭素棒を外す。
ニッケル金網はそのままで、メッキ溶液を別容器に廃棄する。
洗ビン(純水)を用いてビーカー内のニッケル金網をよく洗う。
ニッケル金網をバットに取り出し、4枚にカットする。さらに残り3枚分の切り出し線も作っておく。
(その他の操作 省略)
「注 意」
「観察・結果」
【電池性能データ】
開放電圧E〔V〕 | 端子電圧V〔V〕 | 抵抗R〔Ω〕 | 内部抵抗r〔Ω〕 | |
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「工夫と注意・片付けなど」
「考 察」
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものがありますので参考になさってください。