少しの刺激で大きな破裂音がして、あとには紫色の煙が残る…反応の鋭敏さから取り扱いに十分注意して実施します。
□換気に十分注意しながら、使用済みの器具やろ紙等は乾燥する前に手早く処理します。あくまで指導者による演示実験向きのテーマであり、生徒が興味本位で直接合成や分解の操作に関わることは好ましくありません。
「解 説」
1. シンプルな物質から合成されるヨウ化物:アンモニアとヨウ素を混合させることで生成してくる沈殿固形物は、三ヨウ化窒素 NI3 と考えられます。合成されて生成する三ヨウ化窒素は、アンモニアと複雑な立体構造をとりますが、極めて不安定で正確な構造を決定するのが難しいため、ここでは便宜的に化学式 NI3 として扱うことにします。
NH3 + 3I2 → NI3 + 3HI
古くは19世紀初頭に合成方法が報告されているようです。簡単な操作で作成できるので、デモンストレーションとしてよく扱われることが多いのですが、取り扱いに十分な注意が必要です。鋭敏な反応で、実験後に床に落とした微量の物質を足で踏むだけで破裂音がすることもあります。しかし、時間とともに分解していくので、大量に作ったり、密閉容器に詰め込むなどしなければ、安全に実施することは可能です。
2.ハエが止まっただけで爆発?:合成物をろ紙に集めて乾燥させると、紙や羽、筆の先で軽く触れただけでも破裂音を伴って分解・爆発し、ヨウ素の蒸気である紫色の煙が発生してきます。耳をつんざく乾いた大きな音がするので、音に弱い人は注意が必要です。衝撃による分解反応は、次のような反応式で表されます。
2NI3 → N2 + 3I2
なお、生成する沈殿固形物は、ハエなどの虫が止まっただけでも爆発するなどと表現されることもありますが、実際に虫が止まって爆発したという真偽は定かではありません。
◇参考動画:かなり古い映像です
◇実験タイトル:三ヨウ化窒素の分解
◇サブタイトル:ハエが止まっただけで爆発?
◇キーワード:単体 化合物 化学反応式
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、解説の一部を非公開にしてあります。操作には一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。
◇著書(単著):『サクッと!化学実験(dZERO)』『高校教師が教える化学実験室』『実験マニア(亜紀書房)』