赤リンの乾留すると黄リンが生成します。さらに、気化した黄リンが空気中の酸素と反応する際に、発光する現象が観察されます。※注意を要する実験です!
「動 画」赤リンの乾留
□始めに赤リンが発火し、オレンジ色の明るい光が見えますが、熱していない上部の方には、ぼーっとした黄色い光の帯が出現。酸素を供給すると一気に光ります。
「解 説」
- 空気中で発光・発火:赤リンを試験管内で乾留すると、壁面に黄リンが付着してきます。実験では、いったん赤リンが着火点に達する際に、黄リンが気化してきます。黄リンは、試験管上部で空気中の酸素と反応し、幻想的な黄色の光の帯となっているのが観察されます。黄リンの発火点は約60℃で表面をこするくらいで自然発火するため、水中で保存します。空気中では、室温でも徐々に酸化され、熱と白~黄色の光を発します。青白い光という表現も目につきますが、観察の条件にもよると思われます。なお、この黄リンの燃焼による光は、「燐光」の語源とはなっていますが、「燐光」とは、得たエネルギーを可視光の形で放出される全く別の現象です。
- 数種類の同素体の一つ:リンは古くから存在が確認されている元素で、同素体がいくつかあり、赤リンと白リンがよく知られています。黄リンとされているものですが、正確には白リンの表面に微量の赤リン膜が覆われたもので、薄黄色に見えることから、黄リンという言い方が一般化したようです。第3類危険物(自然発火性物質・禁水性物質)の指定を受け、しかも致死量0.1gという猛烈な毒性を持つため厳重な取り扱いが求められます。実験としてはあまりお勧めできないもので、もし実施する場合は、熟練した指導者による演示のみとし、ドラフト中で行うことが望ましいです。
- 黄リンの性質:教科書では同素体の単元で取り扱われ、赤リンの乾留により得られる物質という紹介もされていますが、皮膚に付くと火傷を起こし、蒸気吸引すると、重篤な消化器症状や神経障害を起こすことがあります。マッチの側薬に使われている赤リンから得ることも可能ですが、危険性を考えると、あえて触れない方が望ましいと思われます。化学組成はP4、正四面体型の分子で構成されます。
◇サブタイトル:おー、リン(黄燐)の発光?
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、解説の一部を非公開にしてあります。操作には一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。
◇著書(単著):『サクッと!化学実験(dZERO)』『高校教師が教える化学実験室』『実験マニア(亜紀書房)』