子どもたちの間でダントツの人気を誇る「スライム」作り。ベトベトしていてぬれているようでそれほどはぬれていない、ドロドロしていて形ができるようでできない、なんとも不思議な触感の物体です。
「動 画」吸水ビーズも混ぜてみた
「動 画」光るスライム:蛍光物質を入れブラックライトで照射
「動 画」鉄粉を混ぜてネオジム磁石を近くにおくと…
「実験タイトル」べとべと不思議物質
「サブタイトル」つかみどころがありません!
「キーワード」高分子化合物 PVA(ポリビニルアルコール) 架橋 ゲル
「準備」「操作」「補足」「注意事項」WEB非公開
「解 説」
1.PVAが水を含んだままゲル化する:洗濯ノリの主成分であるPVAとは、ポリビニルアルコールの略で、一般に市販されているものには10%程度含まれています。PVAは、エチレンに水分子が付加したビニルアルコール CH2=CH-OH が重合し[CH2-CH(OH)]nとして表すことのできる巨大分子(ポリマー)で、洗濯ノリ中では水によく溶け、比較的水の中を自由に動き回ることができます。しかし、そこに四ホウ酸ナトリウム由来のホウ酸イオン [B(OH)4]– (またはBO2–)が加わると、PVA分子内のヒドロキシ基 -OH と水素結合をするため、長い鎖のあちこちに架橋がかかった状態になるのです。動きを制限されたPVAの鎖がロックされた状態になり、その間に水分子が留め置かれてしまうため、水を含んだ粘性の高いゲルとなるわけです。
2.ユニークな遊具「スライム」:濡れているようで濡れていないということですが、実は手でこねるうち体温により水分が少しずつ抜けて扱いやすくなるのです。ある程度は保管が効き、また水分を加えてやれば感触がもどりますが、不衛生であるので再利用はあまり勧められません。
スライムという名称ですが、元の意味は英語の「泥状・粘液状」を示す「slime」からきており、様々なメディアを通してキャラクター化されてきたという経緯があります。玩具としてすでに1970年代には商品化され、科学教材としては、1980年代に海外から紹介されています。学校教育現場で作り方が紹介され、全国に爆発的に広がり現在に至るわけですが、「スライム」の名を知らない子供はほとんどいないのではないでしょうか。もともと、二次大戦時にゴムの産地を日本軍に占拠されたアメリカが人工的にゴムを作ろうとした過程で…
…省略…
3.ポリビニルアルコール(PVA)の活躍に期待?:まだ確定的な情報ではありませんが、東工大の研究グループが、液体のりのポリビニルアルコール(PVA)を用いて、放射線療法の効果を向上させたというニュースが流れました。(2020.1月) 中性子捕捉療法用のホウ素化合物との関連で、何らやスライム作りのキーワードと重なることもあって興味をそそられます。なお、PVAが主成分の液体のりとして「アラビックヤマト」への注目が集まり、会社が文具としての使用以外の誤用についての対応に追われているとのこと。他にPVAを用いた研究として、白血病などの治療で重要な造血幹細胞の増幅に関して、やはり「アラビックヤマト」が取り上げられ注目を集めたことがありました。
◇監修高画質動画→ Yahoo!映像トピックス:スライムレシピ
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、解説の一部を非公開にしてあります。操作には一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。
◇著書(単著):『サクッと!化学実験(dZERO)』『高校教師が教える化学実験室』『実験マニア(亜紀書房)』