備長炭とアルミホイルを用いて電池をつくります。不要となったアルミニウムが電子の供給源になることの意味について考える機会になりますが、炭内部の微細構造に吸着されている酸素と電解液である塩化ナトリウムの存在も重要です。
「動 画」電池の作り方
「動 画」電池特性を測定してみた。ぎゅっと握ればなんとか特性曲線が確認できる。
「動 画」備長炭をお湯にいれたら泡がたくさん発生してきた。たくさんの空気を吸収していることがわかる。
「解 説」
1. アルミニウムが電子の供給源:キッチン用ホイルはもちろん、缶、一円硬貨、サッシ、タイヤのホイル、食器、航空機の本体まで、身近にはアルミ製品があふれています。しかし、原料のボーキサイトのほとんどを海外に依存し、輸入したものを電気分解することで単体のアルミニウムを得ているのが現状です。さらに加工して製品の体を成すまでには、大変なエネルギーを要している材料なのです。アルミ缶1個を作るのに、テレビ数時間をつける電気を消費すると言われ、電気の缶詰と呼ばれるのもうなずけます。アルミ缶がリサイクルの優等生とされることとも関係が深いのです。
Al → Al3+ + 3e–
より、アルミニウム1 mol 27 gのすべてから得られる電子の量はその3倍 mol。(1 molの電子 e– は96500 Cに相当)
回路に流れた電気量Qは、電流の大きさI と時間tの積で表すことができます。また、流れた電気がする仕事Wは、電力Pと時間tの積です。仮にアルミ缶1個を作るのに40 Wの電球を約10時間も点灯できると聞けば、いかに大量の電気が使われているのかを実感することができます。おにぎりを包むアルミホイルを捨てるのも惜しくなってくるに違いありません。
電気量:Q = It〔C〕 仕事量:W = Pt = VIt〔J〕
2. 炭は優れた電極:炭の主成分は、ほぼ単体と考えて良く、金属ではなくても導電性を示す物質です。この電池の場合、炭が正極として、アルミホイル側から供給された電子を酸素に渡し、水酸化物イオン OH– の生成を助ける働きをしています。炭は、熱によって植物体から水分子が除かれたもので、細胞の形がある程度保持されたまま細かい空間(多孔質体)を作るので、炭の内部に酸素が吸着されやすくなっています。特に、備長炭は酸素の吸着度が高く、有効な酸素供給装置であると言えます。
電極上の化学反応としては…
負極:Al → Al3+ + 3e– ・・・① 電子を放出する側
正極:O2 + 2H2O + 4e– → 4OH– ・・・② 電子を受け取る側
両方の電極での反応を①+②としてひとまとめにすると…
4Al + 3O2 + 6H2O → 4Al(OH)3
反応後の炭電極側のペーパー部分で、フェノールフタレインが赤紫色を呈するのは、正極に生成する水酸化物イオン OH– によるものです。
◇材 料:備長炭 ソーラーモータ
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。