酸性・アルカリ性水溶液にそれぞれ共通するイオンの存在を確認させる定番実験です。ストロー内の寒天(含BTB)に塩酸や水酸化ナトリウムを付着させて、電圧をかけることで色の変化を見ようとするものです。
「画 像」実験プリント上に置いて観察
寒天はBTBを少量混ぜて中性(緑色)に調整しておきます。つまようじの先端に塩酸を付着させて、ストローを突き刺すと、塩酸の影響でBTBが黄色に変色します。9V乾電池で電圧をかけると、黄色い帯が陰極(-)側に移動していくのが観察されます。BTBを黄色くさせるイオン種が、陰極(-)に引き寄せ割れることから、移動するのは陽イオンであるということを意識させるというものです。一方、酸化ナトリウム水溶液を付着させた場合は、青色の帯が陽極側に移動するので、陰イオンを持った成分の存在が確認できるわけです。
「画 像」演示教材:広い器に寒天を広げて、もっと観察しやすく工夫したもの。
定番の実験といわれるものの、実験準備には手間がかかり、一般的な細いストローでは観察しにくい面がありました。しかも、このところプラストロー使用を避ける動きが加速している関係、透明のストロー自体が結構入手が難しくなるという状況にあります。そんな中で、流行中のタピオカストローが十分市場にあふれていたのが助けになりました。作業は楽になるし、太くて観察しやすくなっています。
「動画1」2021.6.22実施
「動画2」2019.12.17実施
〇準備は大変だったと思うが、太いストローやBTBの色サンプル、演示教材を準備したのは良かった。ただし、演示実験のサンプルは電極付近の色の変化は隠した方が良い。無用な混乱を招くし、そもそもつまようじ先に付着していたイオン種の移動をとらえればよいだけなので。
〇寒天中のBTBはきちんと緑色に調整されていら。緑色にするのは難儀だったのでは?
〇ストロー中の寒天の量を減らすべきだった。9Vの乾電池でも、イオン移動が遅々として進まないグループが多かった。
〇定番実験としてよく知られるテーマだが、実際にこの題材をこなせる理科教員は希少。よくチャレンジしたとは思う。なお、透明ストローの入手が今後、困難になっていくであろう件についても触れ、タピオカストローがその救いになる点は強調して欲しい。
<理科学習指導案>…文字のみ公開
<指導案:3年_単元1「酸、アルカリとイオン」p42-47>
【本時の展開】
学習過程
全50分 |
学習活動 | 指導上の留意点 (教師の指導・支援) |
導 入
10分 |
1.前時までの学習を想起する。
発問:『酸性、アルカリ性、中性にはどんな性質がありましたか。』 2.実験プリントの「◎確認」に水溶液の性質を記入する。 3.本時の内容を確認する。 ①酸性の水溶液はBTB溶液を黄色に変え、アルカリ性の水溶液は青色に変える。 ②酸性の水溶液とアルカリ性の水溶液は電解質であったことから、これらの水溶液の中にはイオンが存在している。 上記の2点を利用した実験を行うということを確認する。 |
1.前時に行った酸性、アルカリ性、中性の水溶液の性質を確かめる実験を通して、それぞれの水溶液の性質を確認させる。(教科書p42-43)
2.プリントの空欄に記入するよう指示したのち、何人か指名して発表させる。 3.実験の目的を確認させる。 |
展 開
25分 |
1.実験準備:教壇の上から準備物の入ったトレーを持っていく。
2.実験のねらいと手順を理解する。 3.操作開始 4.実験操作終了後、寒天の色の変化を確認しながら、なぜそのような変化が起きたのか考える。 5.観察結果を実験プリントに記入する。 6.実験プリントの考察を記入する。 |
1.準備物はまとめてトレーに入れておき、各班一つずつ持っていくように指示する。
2.実験プリントを見ながら実験方法を説明し電池を繋ぐまでの手順を確認させる。 3.白衣の着用や実験メガネを装着するよう指示し、実験操作中は作業の進行状況を確認しつつ、助言や安全確認を行う。 4.操作終了後、結果が出るまで10分ほどかかるためその間に実験に関する問いかけ(塩化水素、水酸化ナトリウムの化学式等)をする。 5.観察結果を配布した色鉛筆を用いて記入するように指示する。 6.班ごとに話し合い考察し、結論を出させ、プリントに記入するよう指示する。また、考察は理由まで書くように指示する。 |
まとめ・評価・片付け
10分 |
1.考察を発表する。
2.実験プリントの「まとめ」を記入する。 3.片付け 4.実験プリントの「感想・反省」を記入する。 |
1.考察を班ごとに発表させる。
2.まとめ (1) 酸性の性質を示すイオン:水素イオン、アルカリ性の性質を示すイオン:水酸化物イオン (2)電離して水素イオンを生じる化合物を酸といい、水酸化物イオンを生じる化合物をアルカリという。これらのイオンが水溶液を酸性かアルカリ性かを決めている。 3.寒天が入ったストロー、爪楊枝は燃えるごみとして廃棄し、その他のものはトレーに入れて返却、最後に机の上を雑巾で拭くよう指示する。 4.片付けが終わったグループから実験プリントの「感想・反省」を記入するように指示する。 |
【実験プリント】
実験:イオンの移動 教p44-47
実施日時: 天候 気温
年 組 番 班 氏名
「実験目的」
酸性の水溶液とアルカリ性の水溶液の性質の違いはイオンとどのような関係があるのかを調べる。
◎確認:水溶液の性質
酸性 | 中性 | アルカリ性 | |
BTB
溶液 |
|||
リトマス紙 | |||
電流が流れるかどうか |
〇水に溶かした時に電流が流れる物質 →
「準 備」
寒天入りストロー2本 脱脂綿2枚 硫酸ナトリウム水溶液 スポイト1本 炭素棒4本 爪楊枝2本 クリップ付き導線計2本(黒、赤それぞれ1本ずつ) 薄い塩酸 薄い水酸化ナトリウム水溶液 9V電池1本 色鉛筆1ケース
「実験操作」1班3-4人想定
〇操作図
◆塩酸を付けた爪楊枝
陰極 陽極
◆水酸化ナトリウム水溶液を付けた爪楊枝
陰極 陽極
〈塩酸の電離式〉
〈水酸化ナトリウム水溶液の電離式〉
酸性の性質を示すイオン:
アルカリ性の性質を示すイオン:
◎水溶液にしたとき、電離して水素イオンを生じる化合物を といい、水溶液にしたとき、電離して水酸化物イオンを生じる化合物を という。
これらのイオンが水溶液を酸性かアルカリ性かを決めている。
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、解説の一部を非公開にしてあります。操作には一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対(!)にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものが多いので参考にして下さい。
◇著書(単著):『サクッと!化学実験(dZERO)』『高校教師が教える化学実験室』『実験マニア(亜紀書房)』