酸性・アルカリ性水溶液にそれぞれ共通するイオンの存在を確認させる定番実験です。ストロー内の寒天(含BTB)に塩酸や水酸化ナトリウムを付着させて、電圧をかけることで色の変化を見ようとするものです。
「画 像」実験プリント上に置いて観察
寒天はBTBを少量混ぜて中性(緑色)に調整しておきます。つまようじの先端に塩酸を付着させて、ストローを突き刺すと、塩酸の影響でBTBが黄色に変色します。9V乾電池で電圧をかけると、黄色い帯が陰極(-)側に移動していくのが観察されます。BTBを黄色くさせるイオン種が、陰極(-)に引き寄せ割れることから、移動するのは陽イオンであるということを意識させるというものです。一方、酸化ナトリウム水溶液を付着させた場合は、青色の帯が陽極側に移動するので、陰イオンを持った成分の存在が確認できるわけです。
「画 像」演示教材:広い器に寒天を広げて、もっと観察しやすく工夫したもの。
定番の実験といわれるものの、実験準備には手間がかかり、一般的な細いストローでは観察しにくい面がありました。しかも、このところプラストロー使用を避ける動きが加速している関係、透明のストロー自体が結構入手が難しくなるという状況にあります。そんな中で、流行中のタピオカストローが十分市場にあふれていたのが助けになりました。作業は楽になるし、太くて観察しやすくなっています。
「動 画」2019.12.17 実施
〇準備は大変だったと思うが、太いストローやBTBの色サンプル、演示教材を準備したのは良かった。ただし、演示実験のサンプルは電極付近の色の変化は隠した方が良い。無用な混乱を招くし、そもそもつまようじ先に付着していたイオン種の移動をとらえればよいだけなので。
〇寒天中のBTBはきちんと緑色に調整されていら。緑色にするのは難儀だったのでは?
〇ストロー中の寒天の量を減らすべきだった。9Vの乾電池でも、イオン移動が遅々として進まないグループが多かった。
〇定番実験としてよく知られるテーマだが、実際にこの題材をこなせる理科教員は希少。よくチャレンジしたとは思う。なお、透明ストローの入手が今後、困難になっていくであろう件についても触れ、タピオカストローがその救いになる点は強調して欲しい。
<理科学習指導案>…文字のみ公開
日 時 令和元年11月26日(火) 5校時 16:20~18:00
場 所 都留文科大学自然科学棟2階
生 徒 都留市立文科中学校2年1組32名(男17・女15)
実習者 都留文科大学2年 A
指導教員 都留文科大学 教 諭 山田 暢司 印
学習過程 50分 | 学習活動 | 指導上の留意点 |
提示・導入 5分 | 1.発問:『BTB溶液は酸性、アルカリ性、中性でどのように色が変わりましたか。』
→酸性の時は黄色、アルカリ性の時は青色、中性の時は緑色 2.実験プリント準備 3.プリント記入:BTB溶液の色 4.提示:『今回はイオンについて調べていきます』 |
1.何人か指名する。
2.事前授業で配布済みが望ましい。 3.プリントに記入するよう指示する。 |
実験25分
|
1.実験のねらい:酸性、アルカリ性の水溶液はそれぞれ共通のイオンが存在するのか実験する。
2.生徒実験 (1)生徒グループ内での役割確認 (2)机上整理・実験器具・試薬配布:準備完了次第開始 (3)実験内容、観察事項 ①寒天入りストローの両端に脱脂綿を詰め、硝酸カリウム水溶液を滴下する。 ②ストローの両端に炭素棒をさし、ケーブルを繋ぐ。 ③塩酸に反応した黄色のBTB溶液は陰極に移動し、水酸化ナトリウム水溶液に反応した青色のBTB溶液は陽極に移動することを確認する。 (4)実験操作を終了する 3.観察記録の確認 4.演示実験の確認 5.考察 →今回の結果から酸、アルカリとは何なのか考察する。 |
2.
(1)班の中で酸の準備をするグループとアルカリの準備をするグループに分ける。 (2)事前に各班に準備させるのではなく、教員が机上に準備しておいたものを生徒が受け取りに来る形式。 (3)進行状況把握:生徒のイスや服装、机上の整理状況などにも注意をはらう。 ※気づいたことは他の生徒にも聞こえるように全体に向けて指導する。 ※グループによって作業進度に差が生じる。状況を見ながら、観察記録の確認に移っていくよう指示する。 (4)操作終了後、結果が出るまで5分ほどかかるためその間に実験に関する問いかけ(塩酸の化学式等)をする。 3.観察結果の記入。 ※色等を用いて、丁寧に仕上げるよう指示する。 ※実験プリントの記入が疎かになっている生徒が出ないように。 4.解説を交えながら演示実験。 →塩酸は陰極に移動しており、水酸化ナトリウム水溶液は陽極に移動している。 →酸かアルカリかを決めるのは+や-なのではないかと問いかける。 5.班ごとに話し合い考察し、結論を出させ、プリントに記入するよう呼び掛ける。 |
まとめ・評価・片付け
15分 |
1.板書:本時のまとめ
→水溶液にしたとき、電離して水素イオンを生じる化合物を酸、水酸化物イオンを生じる化合物をアルカリという。 2.片付け |
1.板書を写すよう指示する。
→塩酸は陰極に引っ張られているから陽イオンが電離いている。水酸化ナトリウム水溶液は陽極に引っ張られているから陰イオンが電離している。 2.洗浄・廃棄物・返却物・机上整理。BTB溶液の寒天は燃えるゴミ。 |
・学習指導要領(文科省)
<実験プリント:イオンの移動>
3年 組 番( 班)氏名
酸性 | 中性 | アルカリ性 | |
BTB溶液の変化 |
2.【実験】イオンの移動の観察
(1)用意するもの
・寒天入りのストロー(各班2本) ・脱脂綿(各班4枚) ・硝酸カリウム水溶液 ・炭素棒(各班4本) ・爪楊枝(各班2本) ・電池(各班2本) ・ケーブル(黒、赤それぞれ2本ずつ)
・色鉛筆(各班1ケース)
(2)操作手順:→教科書p45のステップ2参照
(3)観察 ・塩酸をつけた爪楊枝
・水酸化ナトリウム水溶液をつけた爪楊枝
4.考察
・酸、アルカリの違いについて、観察から読み取れることを文章で!
5.まとめ
以上から、水溶液にしたとき、電離して を生じる化合物を酸といい
水溶液にしたとき、電離して を生じる化合物をアルカリという。
~模擬授業に関する感想、改善点等~
◇このブログで発信する情報は、取扱いに注意を要する内容を含んでおり、実験材料・操作、解説の一部を非公開にしてあります。操作に一定のスキル・環境を要しますので、記事や映像を見ただけで実験を行うことは絶対にしないで下さい。詳細は、次の3書(管理者の単著作物)でも扱っているものがありますので参考になさってください。